C87で買ったCD・本のレビュー、11本目はAVTechNO! (アドバンステクノ)の最新作「17k -Disorder」。

主にVOCALOID・巡音ルカを用いたテクノサウンドが作風の中心となります。テクノと言っても狭義のそれではなく、ドラムンベースやアンビエントなど様々なジャンルの色を足して混ぜあわせた結果、独特の響きを持つ楽曲が次々と生まれています。

同人活動も積極的で、これまでにリリースしたCDはおそらく10枚では効かないでしょう。個人的には、これらの同人CDの他にも、代表作を多数収録したベスト盤「AVTechNO! Collection Thank you pack!」が価格も非常に手頃で(むしろこの価格でいいのか疑惑も…)おすすめです。



AVTechNO! / 17K -Disorder

リリース: 2014/12/30
ジャンル: テクノ
販売: とらのあな

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AVTechNO!の音楽を一言で表現するなら「衝動」だ。作曲家は”ジャンルを意識して作曲する人”と”ジャンルを意識しない人”の2種類に分けられるが、AVTechNO!の場合は俄然後者に属すると筆者は考える。その作風は、名前の通りテクノを軸にしていると言えそうだが、他の様々なかたちの電子音楽を可能な限り詰め込んだようなもので非常に混沌としている。そのトラックからは、衝動のまま紙と鉛筆に殴り書きしているような生々しさを感じることが出来るのだ。

そして何よりも驚くべきは、この初期衝動の塊のような作風が、デビュー以降ずっと変わっていないことである。AVTechNO!はこれまでの活動の中で、ありとあらゆる音楽を貪欲に吸収しては自らの作品に取り込んでいったのだが、筆者の知る限りそのアンテナが錆びたことがついぞ無い。その魂は、たとえ少々濁ったところですぐ更新され、好奇心と表現欲の純度を保ち続けているのだ。おそらくAVTechNO!にとって、自分の作っている音楽が自分の中で古くなることはないのではないだろうか。

肝心の曲についての感想が遅れてしまった。今回のアルバムはすべて新曲の全6曲で構成される(別Ver1曲+カラオケトラック1曲を含む)。タイトルトラックの1曲目「17k」は疾走するビートにボーカルの機械的な叫び声が響き、時折超高音を発する様にジャケットイラストのような都会的な匂いを見出すことが出来る。2曲目「06E」は、物静かなイントロからBPM128の力強いビートへ繋がった時の高揚感が心地よいクールなトラックだ。3曲目「XX9」は、イントロで無機質で平坦なワブルベースの上にピアノが乗るという予想外の音色が終始続く、というきわめて硬派な曲。4曲目「17k Virtual Sound」は、1曲目に銃撃戦の音をサンプリングしたイントロやらを追加して豪華になったバージョン。ニコニコ動画やYouTubeで先行公開されているのはこちらのトラックである。5曲目「7S」は、これまでの重厚な曲とは一線を画すアンビエント色の強い癒しの曲だ。6曲目は2曲目「06E」のインストトラック。

いずれもいかにもAVTechNO!らしい、ダークで硬派なトラックに仕上がっている。5曲目「7S」が比較的やわらかなサウンドで癒やしだとも表現したが、それでもとても暗く内省的な響きを持っておりエンディングに相応しい。しかし再生時間が2分28秒と、それ単体で聴くにはやや短すぎるのが玉に瑕か。こういうゆったりした曲こそ5,6分の長尺で聴きたいものだ。それ以上長くても筆者としては全く問題ないどころか大歓迎であるが一応心に秘めておくこととする。



C87で買ったCDのレビュー、10本目はきくお4作目となるVOCALOIDアルバム、その名もずばり「きくおミク4」。

2013年夏の「きくおミク3」から1年4ヶ月ぶりとなる、初音ミク歌唱のフルアルバムとなります。今作では、これまで以上にアルバム全体でのまとまりが強く意識されており、リリース直前に公開された数曲以外はほぼすべて新曲となります(ボーナストラック除く)。

きくおというミュージシャンはとにかく攻撃的な曲を作ります。音の打撃と洪水による”物理攻撃”、急展開する曲調や過激な歌詞世界による”精神攻撃”の2つを軸に、波状的にリスナーに迫りゆくオーラは唯一無二のセンスを感じさせます。しかし、今回の「きくおミク4」では音そのものの激しさは鳴りを潜め、代わりに曲の持つ世界観を緻密に練り込んでいます。結果として、おそろしく聴きやすいにもかかわらず、これまでで最も尖ったアルバムが完成したのです。



きくお / きくおミク4

リリース: 2014/12/30
ジャンル: エクスペリメンタル・ポップス
販売: Amazon.co.jp / とらのあな / BOOTH

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間違いなく、これまでの「きくおミク1~3」とは何から何まで違う作品だ。

キャリアを通して様々な音楽を吸収してきたきくおだが、このアルバムではそれら全てをうまく消化し、自らの作品の一部に出来ていることが伝わってくる。5曲目「Giant」は、ワブルベースの扱いが特に光る傑作だ。巨人を主人公にしたストーリーが展開されるのだが、これまでのきくお作品でもたびたび現れたワブルベースが今回は”巨人”の役割を与えられ、その雄大さと悲哀を同時に演出しており技巧的だ。8曲目「おばけの招待状」はベースラインが素晴らしい。ベースに拘るあらゆるポップス・ロックに引けを取らない出来栄えであるだけでなく、間奏ではこのベース以外ほぼ聞こえない静かなパートをそこそこ長めに設けているため、筆者の好みに最もクリーンヒットした。作曲者の自信を感じさせてくれる素晴らしい編曲だ。

9曲目「フラットライン」は、ブラックミュージックの香り深い異色の曲だ。曲全体にエフェクトを強く掛けており、かなり輪郭がぼやけているものの、そのビートには間違いなく”ソウル”が込められている。10曲目「マンダラ」は、もはや先人へのリスペクトと言っていいほどテクノポップ色が強い。シンセやらビートやら何から何までまさに少し前にシーンを築いたその音楽であり、宗教色すらにじみ出る壮大なサウンドスケープは奏でている風景を目の前に映してくれる。あたかも映画音楽のような情景描写力を持った音楽が、曲全体に渡り展開されるのである。しかもこの曲、前半はリスペクト色が強いのだが、後半できくお流のビートメイキングにストンと落とし込んでおり、そこまでの流れがあまりに自然で、聴き込めば聴き込むほど驚愕させられる。ある意味、このアルバム中で最も衝撃的な展開である。

ちなみにこのアルバムは、11曲目「無限の時間を与えましょう」までの約50分間が本編、残り4曲は既存曲のセルフリミックス等の”ボーナストラック”となる。最初の11曲はいずれも同じ哲学で作られているように感じられ、50分でひとつの曲、というよりひとつの組曲のような印象を受けた。世界観はどれも、一見優しそうだけどもよく見るとギョッとするものが隠されており、音楽自体が非常に聴きやすく作られているものだから、そこに仕込まれた毒ごと美味しく頂けてしまうのだ。あえて例えるなら、曲ごとの個性を演出した「きくおミク1~3」は”きくおカタログ”、アルバム1枚でトータルの世界を見せた「きくおミク4」は”きくお定食”と表現することが出来るだろう。「きくおミク4」はアルバム本編を聴き終えた時点で大満腹の大満足なのだが、この後に控えているボーナストラックがデザートというには少々刺激が強かったりするので油断できない。



12曲目「塵塵呪詛 - Second curse - (2014 Livemix)」、13曲目は「てんしょう しょうてんしょう (2014 Livemix)」、14曲目は「A happy death - Again - (幸福な死を 2014 Livemix)」と、これまで発表してきた楽曲のセルフリミックスとなる。"Livemix"と書かれている通り、DLライブ等で回すためにアレンジしたバージョンなのだが、イントロやアウトロを長めに取ったり、曲展開の起伏を大袈裟にしていたりとどれも非常に刺激的なアレンジがなされている。特に「てんしょう しょうてんしょう」は7分を超える大作となっており、筆者が最も好きな曲なのだが、テンポが速くなったり遅くなったりを繰り返すため最もノリにくい曲でもある(笑)。きくおはそこを踏まえた上でか、元曲の展開をさらに大胆なものにしているのでもう笑いが止まらない。次にきくおのライブに行く時までには、「てんしょう しょうてんしょう」が流れた場合に備えてこのLivemixを完璧に覚えておきたいところだ。・・・え?その頃にはまた新しいMixが出来上がっている可能性が?ハハハ、そんなバカな。しかしきくおならもしや・・・(以下略)。

そして濃厚なリミックス3曲を堪能した後に、全く予期しない方向からの衝撃がやって来る。15曲目「テクノロジーに夢乗せて」は、このアルバムの本当の意味でのラストトラックなのだが、長らくご無沙汰だった”明るいきくお”節が展開されている。一部のきくおリスナーは覚えているだろうか、リニューアル前のきくお公式サイトの”楽曲依頼”の項目を。そこには、AとBの2つのプランが提示されており、Bは”ソロアーティストとしてのきくお”を期待するクライアントのために攻撃的な曲を提供するプランなのだが、Aは可愛くてノリノリな商業ポップスを提供するプランなのだ。今でこそきくおはアーティスト路線に一本化しているが(実験的とは言ってたが)、ちょっと前まではこうしたポップミュージックも積極的に書いていたのだ。その”職業作家としてのきくお”を象徴する曲がこの「テクノロジーに夢乗せて」と言えるだろう。初音ミク7周年記念企画「MikXperience e.p.」への提供作品でもある。ボカロPとしてのきくおは、数々の代表作を挙げるまでもなく刺激的で個性的な楽曲を多数公開している。そんな中で、ボカロPとしてこうした「表のプラン」で楽曲提供したことがとても新鮮だったのを覚えている。曲の展開に合わせて作曲ソフトの性能が進歩し、音数がどんどん増えていく演出は聴いててワクワクさせられる。表の顔でも裏の顔でも、決して手を抜かないのがきくおという音楽家なのだ。「きくおミク」シリーズは、きくおの活動記録としての性格も持っているので、一見アルバムの雰囲気に合わなそうな曲でも余すことなく収録されているのだが、この曲もなるべく浮かない立ち位置で入れよう、という努力の跡が垣間見えて好印象を受けた。 

 

最後になったが、このアルバムに関しては、しーくの描いたジャケットイラストをあしらったアートボードなるグッズが作られている。CDやアナログ等のディスク媒体のメリットとして「インテリアとして部屋に飾れる」ことが挙げられる、と筆者は常日頃から考えているのだが、今回きくおとしーくはインテリアそのものを作ったわけだ。しかも個人で。ここからも、この「きくおミク4」というアルバムに関して、製作者の2人がサウンドだけでなくビジュアルでも大きな自信を持っていることがひしひしと伝わってくる。このアルバムに興味があって、お金と部屋の壁に余裕のある人は購入を検討してみてはいかがだろうか(→販売リンク)。







C87で買ったCDのレビュー、9本目はMilliRobo.beta 2年ぶりのアルバム「大人のミリロボベータ」。

サークル主宰でありコンポーザーの園山モルは、ボカロP「盛るP」として非常に前衛的で攻めたサウンドのニューエイジ・ポップスを世に出し、リスナーを阿鼻叫喚の極楽三昧に誘ったことがあります。代表作の「ハイセンスナンセンス」は知っている人も多いことでしょう(→動画リンク)。

ボカロの活動が一段落した後は歌い手「マリネ」とともにMilliRobo.betaを結成。2012年冬には初のミニアルバム「ミニロボベータ」をリリースしています。その後私生活が多忙となり活動を縮小したものの、創作活動は続けておりこの冬ついに2年ぶりの2ndミニアルバムをリリースしたのです。




MilliRobo.beta / 大人のミリロボベータ

リリース: 2014/12/30
ジャンル: ニューウェイブ
販売: とらのあな

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一言で言うなら「園山モル、健在!!」。いやあ、まさかここまで変わっていないとは思わなかった。 極めて強烈なシンセサウンドは強いて言うならニューウェイブ、ゴリッゴリのテクノが自由奔放に空間を乱反射する様は一聴しただけで圧倒される。しかも、そのサウンドがあまりに尖っているものだから、一線も二線も超えて完全に突き抜けてしまったためかえって取っ付き易くなってしまっており、そこには「ポップス」の香りが漂っているという超常現象が起きているのである。何度聴いても理解が追いつかないし、その音使いに「慣れる」ということが出来ない、けどとても楽しい音楽。何度聴いても、最初に聴いた時の衝撃を味わい続けることが出来る、濃密で気持ちの良い音楽がここにはある。

そして、ボーカリストのマリネも相変わらず切れ味抜群!!ロリータ一直線の萌え声だけども、この轟音テクノに埋もれないどころか完全に一体化しており、もはや「ロリータ・ロック」と呼ぶべき骨太さをも感じるとてつもない声質をしている。悶絶モノの歌声からあざとさの塊のトークまで、一片のブレもなく完璧にこなすスキルの高さには思わず脱帽。これも、このユニットを最初に聴いた時の印象からずっと変化しておらず、曲だけでなくメロディや歌詞の内容まで常軌を逸している園山モルの作品を120%歌い切る相性の良さは、もうこの人以外のボーカルは考えられないとまで思うほどなのである。

このアルバム「大人のミリロボベータ」は全4曲収録。このタイトルや、色気を全力で演出したジャケットイラストには、「大人の人生を楽しく過ごして欲しい」との意図が込められているようだ。うむ、よくわからない。だがこのエロいジャケットの印象に違わぬエロい曲も一応は入っており、4曲目「タヂウ人格」は一部にエロい演出が加えられている。ちなみにこの曲、「盛るP」として公開したVOCALOIDオリジナル曲のリメイクでもあるので、初音ミク歌唱版を動画で楽しむことも出来る(→動画リンク)。

そして歌詞カードを読んで気づいたのだが、このアルバムに入っている4曲には共通する設定がある。1曲目「ゼンマイ・イン・マイ・ハート」は未熟な技術で生み出されたロボットの話で、2曲目「タチマチ・エラー」は世界はバグで満ちていると孤軍奮闘する人の話、3曲目「ポルカ、また年が明けたよ」は記憶喪失の話(アルバムリリースが年末なので時節に合った曲でもある)、4曲目「タヂウ人格」は多重人格のようなそうでないような話。ネタバレ回避のため要の部分は端折ったが、要は4曲すべてで「欠陥」というテーマが基盤となっているのだ。それも、心を持ったロボットだったり多重人格だったりと、いずれも極端な形で表現されており、非常に尖っている。述べた通り、どの曲もとてもポップで明るく歌われているのだが、反面歌詞のストーリーはどれもバッドエンドに終わってしまっている。そのギャップのためか、悲劇性を演出することはなく、むしろ笑いながら死んでいくような狂気が醸し出されているのだ。

この作品からは強烈な「社会性」を感じる。それは、歌詞の世界において絶対的に不幸な主人格たちへ、不可避的に感情移入をしているからなのかもしれない。そこまでのめり込ませるだけの世界観を構築できているというところも、素直に賞賛したい。しかしそれでも、筆者はこのアルバムにはこれと言った社会的なメッセージが込められておらず、唯一無二の娯楽作品として孤高のクオリティを体現した作品であるという意見を貫いていきたい。「社会性」のように見えるものは決して使命に燃えて描かれたものではなく、ただリスナーがこの作品の持つ狂気を受け止めきれずに、何らかの意味付けをして防衛したくなってしまう本能の表れなのだ、と考えているからだ。音楽の暴力を真正面から受け止めるか、ひらりと避けながら自分なりのスタイルで楽しむかは、まさにリスナー次第である。



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