今年初頒布された同人CDから10枚を選び、レビューを書きました。

※対象アルバム・・・2013年冬コミ~2014/12/19までの間にリリースされた、あらゆる媒体のアルバム。
※VOCALOID/UTAUを使用したものは「Vol.1 VOCALOID/UTAU20選」にまとめています。
※順位に深い意味はありませんが、それなりに真剣に考えました。

【2014年ベストアルバムの記事一覧】

Vol.1 VOCALOID/UTAU20選 ・・・ 2014/12/19(金)公開
Vol.2 同人音楽10選 ・・・ 2014/12/20(土)公開
Vol.3 サウンドトラック10選 ・・・ 2014/12/21(日)公開
Vol.4 ロック・ポップス6選+電子音楽6選 ・・・ 2014/12/23(火)公開
Vol.5 今年出会った旧譜10選 ・・・ 2014/12/24(水)公開




 
(10) QUADROPHENIA / NEAR

リリース: 2014/08/17
配信: Bandcamp


宮沢もよよと村上くるるによるハイパー・エレクトロニカ・ユニットことQUADROPHENIAの6曲入りミニアルバム。前半3曲が村上くるる、後半3曲(歌モノの5曲目「Moon」含む)は宮沢もよよが担当している。2人の曲調の違いとしては、村上くるるは「音数少なめで内向的」、宮沢もよよは「音数多めで開放的」という印象を受けるが、共通する要素として「柔らかいノイズ」「都会的な空気」そして「王道のエレクトロニカ」が挙げられるだろう。今回紹介するアルバム「NEAR」でも、村上節全開のいい意味で隙のあるサウンドメイクは、他との接触を好まない内向性とは裏腹にある種の取っ付きやすさをも感じるし、宮沢パートから溢れ出る力強さは、ゆったりしたBPMや穏やかな楽器で編成されたオケからは想像も出来ない力強さを放っている。QUADROPHENIAのアルバムは、どれもこのユニットを初めて聴く人に勧めやすい。それは、奇抜な構成をしたアルバムが現時点では存在しないためでもあるが、どのアルバムでもインストと歌モノを両方聴けたり、宮沢もよよと村上くるるの2人の曲を聴き比べたり、2人のキャラクターやCDやWebサイト等で補完される”少女性”を等しく味わえたりするからである。作曲家2人とイラストレーター、デザイナーの4人によるユニット”QUADROPHENIA(四重人格)”。最後になったが、このアルバムには裏コンセプトがあるらしい。それは「少女をストーカーする少女からの手紙」。このCDのパッケージは特殊で、まずCDと一緒に2枚の写真(という設定のポストカード)が入っている。それは、ターゲットである少女を隠し撮りした写真だ。そして包装紙に大切に、しかし雑に包まれているのはCD本体。これは、ストーキングをしている少女からの手紙という設定なのだろう。このアルバムの特設Webサイトにもちょっとした仕掛けがあるので、気になったら見に行ってみて欲しい。なお、このパッケージはこの通り非常に特殊であるため、量産が難しいことから現在はデジタル配信のみとなっている。幸運にもこのCDを手に取ることが出来た方は、是非このCDを開封して襲いかかる「恐怖」を感じてみて欲しい。



(9) Prhyzmica / convergence

リリース: 2014/04/27
配信: 作者サイトにて


Prilyによるサークル、Prhyzmicaが夏にリリースした7曲入りミニアルバム。まず特設サイトがかなり大掛かりだ。Tumblr用テンプレートがかなり普及してきた中で、URLを開いたら読み込みゲージが発生するようなコンテンツの多い特設サイトを作るのは苦労の要る作業と推察される。とはいっても目まぐるしく移り変わるわけではなく、楽曲の雰囲気によく合ったモノクロの風景が画面全体に広がる非常に硬派なサイトである。その楽曲は平たく言えばアンビエントなのだが、このジャンルから受ける印象であるところの「重さ」はない。カリカリチリチリポコポコの軽いノイズによる導入的な1曲目「receptor」から、13分31秒もの長尺である2曲目「meltwater」にはシームレスに繋がっている。クッキーのようにサクサク軽いノイズに、零れ落ちる水音も加わり大変心地よい空間となっている。3曲目「puddle reflection」は縦ノリのビートミュージックだが、BPMも小さくゆったりリラックスしながら聴けるためこのアルバムにも溶け込んでいる。4曲目「repression」は輪郭のはっきりしたシンセサウンドが曲の展開を引っ張る典型的なエレクトロニカ。5曲目「convergence」はタイトルトラックだが、リズムもメロディもない最もアンビエントに近いトラックである。6曲目「repeat repeat」は本当に素晴らしい。2曲目にも通じる軽めのノイズと水音が主軸だが、今回は水音がメイン。そこにガラス棒がぶつかり合うような透明な音が幾重にも絡む美しいサウンドを、11分12秒の長尺で響かせる。7曲目「northern lights」はタムがビートを刻む異色のエレクトロニカ。これも9分19秒かけてじっくりと盛り上げていく。このように、曲数は7曲とアルバムとしては少なめだが、長い曲が多く全体の再生時間は52分41秒となっている。明るすぎず、暗すぎもしない中庸をふわふわと浮いているような、どちらを聴くのも疲れた時まさに聴きたくなるアルバムだ。作業用BGMにも、聴覚以外のすべてを遮断して鑑賞するにも耐えられる、良質なアンビエント・エレクトロニカ盤である。



(8) Task / 僕にとってのNNI

リリース: 2014/04/26
通販: THREE通販


ボカロPとしての活動が盛んなTaskにとって、初となる非ボカロアルバム。NNIとはニコニコインディーズ、つまりニコニコ動画においてカテゴリ化され、固定リスナーが数多く存在する「VOCALOID」や「UTAU」ではない、その他のオリジナル曲全般を指している。といってもただの半端者カテゴリに留まらず、そこにも独自のコミュニティが形成され日々新曲が投稿されている元気なカテゴリである。そのNNIに真正面から向き合ったのがこのアルバムだ。リリース前、いつものようにTwitterをぼーっと眺めていたら試聴音源のリンクが流れてきた。普段聴かない作家なのでほんの気まぐれでURLを開いてみたら一気に目が覚めた。試聴だけでこんなにドキドキできるアルバムにはめったに出会えない。そして発売日を迎え、CDを購入して全曲をフルで聴いた。ああ、音楽ってなんて楽しいんだろう!試聴時の印象通り、いやその時以上にその感情を強く実感した。難しいことは何もしていない。押し付けがましくも、人を選ぶ強い癖があるわけでもない。普段なら聞き流している類の音楽だろう。だが、その演奏が堅実であるためとても聴き心地が良く、また真っ直ぐすぎてダサくならない程度に曲への「仕込み」がなされているため、テクニカルな印象すら受ける。それでいて「楽しさ」を前面に押し出している。バランスの取り方が抜群に上手いのだ。かなりの技量の持ち主であることは間違いない。そして同時に、自分の音楽を心から愛していることも大いに伝わってくる。そんなTaskの作家性が存分に発揮された、素晴らしいアルバムだと思う。



(7) Never mind. You're right. - THEiDOLM@STER “XENOGLOSSIA” TRIBUTE COMPILATION ALBUM

リリース: 2013/12/31


アイドル育成ゲーム「アイドルマスター」の登場アイドルがなぜかロボットに乗って人類の敵と戦うアニメ「アイドルマスター XENOGLOSSIA」。その突飛な設定が受け入れられず、アイマスに詳しくない人からすらもネタ同然の扱いを受けている不遇な作品だが、その逆風の中トリビュートアルバムが同人CDとしてリリースされた。エレクトロニカ・ノイズ等の電子音楽を中心に構成されたアルバムであり、曲はすべてオリジナルなのだが、特徴はアニメ内のボイスを多数サンプリングしているところだ。時にはとあるシーンのもうひとつのサウンドトラックのような、時にはボイスを半ば音声素材としたかのような全12曲を収録しており、曲だけでなく”このボイスはどのシーンから持ってきたのか”と作品内のストーリーをも意識しながら聴くため、目眩がするほど情報量が多い。そして、こういった性質の企画に筆者は強い既視感を覚えていた。アニメを愛し、アニメのサンプリングを多用した電子音楽の祭典、これはまさにネットレーベルの初期リリースの空気そのものではないか。Altema Recordsの「K2」を引き合いに出すまでもない。あの混沌は"JOY"と"LOVE"の発露以外の何物でもなく、「熱狂する俺ら」をそのまま切り取ったかのような何でもありの空間にリスナーが呑まれてゆくあの感覚は簡単に忘れられるものではない。それをそのまま同人CDにしたという主宰の行動力にはただ敬意あるのみである。おそらくこういう作曲スタイル自体がかなり好き嫌いの分かれるものだとは思うが、このコンセプトを面白いと思った方は、特設サイトを是非訪問してみて欲しい。通販は・・・まあ難しいだろうなあ・・・。



(6) Lost In Thought

リリース: 2014/08/17
通販: Public Rhythm Online Store 


7曲入りのエレクトロニカ・コンピレーション。タイトルは直訳すると「呆然」。参加者はeffe/Phasma/N-qia/wk[es]/Go-qualia/Flady/Lycoriscoris。この名前を見た時点で、どのような曲調のアルバムか予想できた人もいることだろう。実際、その予想を全く裏切らない良質でメロウな和製エレクトロニカを堪能できる。参加者のうち、「ふんわりちゃん」として定期的に同人CDをリリースしてきたPhasmaや、ネットレーベルの雄でありつつも同人CDへのゲスト参加実績がそこそこあるGo-qualiaを除けば、”同人音楽”の文脈ではあまり見かけない名前が多い。Go-qualiaやwk[es]、fladyはネットレーベルの活動が中心であり、特に先の2人は自身のネットレーベルも抱えている。N-qiaやLycoriscorisは元々商業畑で活躍している人物だ。同人と商業、そしてネットレーベルの間にある"場所の質"の違いを安々と超えてくるフットワークの軽さに興味を惹かれたのが、このアルバムを同人CD10選に選んだ理由の一つでもある。ああ、質と言っても作品の良し悪しに差があるというわけではなく、この3つのプラットフォームでは創作活動をする理由というか原理が根本的に違うと思っているので、参加者はそれぞれが自由に動ける活動スタイルだったり、今回の企画者への信頼があったりしたのだろうなと思ったのだ。あるいは、特に同人とネットレーベルとの間の意識の垣根が時代とともに徐々に低くなり、別の方で活動していても違和感を感じなくなったのかもしれない。話をCDの中身に戻すと、知っている人にとって期待通りの音楽という表現は、決してそれがつまらないということを意味しない。むしろ逆に、ここまで予想がドンピシャで当たったにもかかわらず、アルバムを聴き終えた後にどの収録曲にも大いに満足できたということである。「予想通りかつ期待以上」というのは、聴き手が各々用意している評価のハードルを正面から飛び越えるようなものであり、つまりよほど自分たちの作品に自信があり、かつその質が非常に高いもので無い限り起こり得ない現象なのだ。人選は企画者のtrorez(masahiro oda)が行ったものらしい、アルバム全体の統一感も出ており、この手の音楽を愛するリスナーにとってはたまらない1枚だ。これほど素晴らしいアルバムが、通販も配信もなされていないという事実に世の不条理を感じずにはいられない。



(5) Stellatram / PARADIGM SHIFT ~cenjue innna, cenjue ciel~

リリース: 2014/10/26
通販: アリスブックス通販


ゲーム「アルトネリコ」シリーズの鍵となる、このゲームのためだけに編纂された独自の造語「ヒュムノス」。かなり詳しい文法が設定されているその言語を用いて、アルトネリコへのオマージュを込めたオリジナル曲を作ろうと発表された同人CDがこのアルバムである。同じくヒュムノス好きの琴線をコンセプトの段階から激しく揺さぶってくるのはまさに同人音楽ならではの自由さゆえだろう。このアルバムには4人の少女が登場し、それぞれの物語が綴られている。「少女の紡ぐ歌」を軸に据えているところも「アルトネリコ」へのオマージュである。各々が4トラックのパートを持っており、1曲目が数十秒の導入、2曲目と3曲目が対になる全編ヒュムノスの「精神世界BGM(表層/深層)」、そして4曲目が物語の鍵となるボーカル曲。4つの物語が順番にこの形式に則って語られるという構成美も、このアルバムの特色の一つである。更にはWebサイトでは小説が公開されており、CD購入者限定のコンテンツまで別途用意されているので至れり尽くせりだ。曲調は全体を通して緩やかであり、宗教色を感じる美しいファンタジーを見出す事が出来る。4つの物語は舞台世界を共有しており、それぞれが同じ文化の上に成り立っていることを強く意識した統一感をも感じる硬派な作品である。筆者にとっては、アルトネリコといえば3のカオスなイメージが強く残っているため、1や2の堅実な路線に忠実なこのアルバムはかえって新鮮に聴こえ好感だった。とはいっても12曲目「EXEC_HYMME_ROAD=ROMANCER/.」は、あえて鼻がひん曲がるほどクサいJ-POPに仕上がっており、このアルバムの腰砕け担当となっていて非常に強烈だった。きっとこの物語の少女がこういう”いい意味で空気の読めない子”なのだろう、と勝手に想像している。実際、アルトネリコのシリーズ中にも、どう好意的に解釈してもファンタジーとは合わないであろうアゲアゲなトラックを引っさげて登場するキャラクターも少なくないので、この点でも実に「それっぽい」。コアなファンが多いタイトルであるため、このコンセプトでそれなりのものを作るには結構ハードルが高いと思っていたのだが、作曲陣・ボーカル陣ともに高いスキルを持っていたため、アルトネリコの音楽に浸っている時期のあった筆者も非常に満足できる作品となった。ヒュムノスシリーズを知っている方にはぜひとも、よく知らない方にもそれとなく勧められる創作ファンタジー音楽である。



(4) Team Project C (OOPARTS) / The Genesis

リリース: 2014/04/27
配信: BOOTH 


ほんとすいませんでした。正直なめてました。・・・何をかと言うと、打ち込みオーケストラのことである。「打ち込みオーケストラ」「仮想RPGの音楽」というコンセプトでリリースされたコンピレーション・アルバムであり、昨年リリースされた同様のコンピレーション「Symphonic Scenery」の流れを引き継いでいる。当然だが、よりリアルできめ細かく、迫力のあるサウンドをしているのは生演奏のオーケストラの方だ。だが、ここに収録された楽曲群はとにかく魅せ方が上手いのである。巧いと書くべきか。やりたいことがこれでもかと言うほど伝わってくる。にも関わらず、技術ばかりが先走り中身が空回りすることもない。高望みをしすぎない手慣れた腕前からは、絶妙なさじ加減が守られている事をひしと感じる。中には、厳密にはオーケストラとは言えないであろう編成の曲もある。だがそれこそがデスクトップ・オーケストラの醍醐味でもある。PCの中で鳴らせば、オーケストラもシンセもドラムも全部「音色」という次元で等しいのである。非現実の楽器であるソフトシンセも、DAWの中ではオーケストラの仲間入りが出来るというわけだ。それにしても、どの曲も実に美しい。その上、自分たちの世界を各々確実に持っている。このアルバムを切っ掛けに、打ち込みオーケストラへの見方がガラッと変わったのは言うまでもないことである。200円という手頃にも程がある価格で買えてしまうので、ちょっとでも気になった方は是非とも購入していただきたい。



(3) 菊田裕樹 / 女子真空管交響楽

リリース: 2014/08/17


このアルバムの成り立ちは少々複雑だ。まず、John Hathway(JH科学)というイラストレーターが自ら制作した「真空管ドールコレクション」というトレーディングカードゲームが存在する。その名の通り、真空管で作動する美少女アンドロイドのシリーズなのだが、その表情は愛らしいもののどこか異質な感触がある。人によっては「狂気」とすら感じるであろう、エキセントリックな世界観を持っているのだ。この世界観をベースに作曲家・菊田裕樹が独自の解釈を行い、音楽にしたためたのがこのアルバムである。この「自分勝手さ」がいい意味で同人らしさを体現しており面白い。世界観だけでなく曲もまた先鋭的であり、CDの総再生時間は約43分なのだが、収録曲は1曲。つまりこの1曲が43分もの長尺なのだ。5分間じっくりかけたイントロから打楽器が爆発、華々しい幕開けとなるので長尺好きにはたまらない。その後楽曲は静と動を交互に繰り返し、大枠の曲展開は反復中心のミニマルなものとなるのだが、動のパートは打楽器と金管楽器が鼓舞し否が応でも釘付けにされ、静のパートはダークメルヘンチックな叙情性を醸し出して筆者の好みのツボを休まず刺激し続けるため一向に飽きる気配がない。アウトロはイントロの逆回しで静かに収束していくため、そのままイントロと繋いで永遠のループを作ることが可能となっている。言うならば、このアルバムは「真空管ドールコレクション(公式略称:管コレ)」の世界そのものへのイメージサウンドトラックであり、このエキセントリックな世界の様相を日の出(始まり)から日没(終わり)まで克明に記した記録映画でもあるのだ。菊田裕樹と言えば当然ゲーム音楽におけるビッグネームであるわけだが、決して短くない期間同人活動を続けている同氏にとってみれば、両方のキャリアがシームレスに繋がり、職人として作る音楽と芸術家として作る音楽の境界線を意図的に排除した創作活動をすることなどお茶の子さいさいなのだろう。自由を謳歌できるプロほど恐ろしいものはない。このアルバムは配信が予定されているのだが、今年の冬コミ(C87)が終わった頃には開始していると思われる(そうだといいなあ)。



(2) m@sumi / ∞magic

リリース: 2014/04/27


ファンタジックなジャケットに惹かれて手に取ったら変拍子プログレロックだった。何を言ってるか分からねえと思うが、気が付いたら好みド直球のアルバムを引き当てていた。「プラスチックペンギン」というユニットのコンポーザー、m@sumiのソロ初となるCDである。1曲目のインスト「Λ-op.3」と2曲目のタイトル曲「∞magic」は、とにかく自由かつ力強い譜面でリスナーを翻弄してくる。3曲目「riccia」は一転して6拍子(時々5拍子)のバラードであるのだが、ここで落ち着かせてくれると思いきや全体を覆うコードワークは終始緊張感に満ちており、リスナーは静かな刺激を受け続ける。4曲目「華神」は拍子の変化はなく、雰囲気抜群のサウンドに低めの女声ボーカルが乗り実に神々しい。ゲームサントラで言うところの、戦闘後のクールダウンのような曲と言われて通じれば幸い。曲後半のバイオリン伴奏パートが特に素晴らしく、センスを感じる。5曲目「Missing Edge」はまたガラリと曲調が変わり、男声ボーカルによる直球ロックナンバーとなっている。個人的にはもう少し捻った方が好みだったし、このアルバムでも浮いたりしなかったと思う。例えるなら、ロボットアニメの戦闘中に突然流れる味のある挿入歌のようなものか(どうしても劇伴音楽に例えてしまう)。6曲目「可愛いハリネズミ」は98秒の小曲。タイトルからして可愛い曲かと思いきや、1曲目と同じ路線のプログレ色濃いインスト曲で、小曲ではあるのだが箸休めにはなりそうにない。7曲目「ループ×ワープ」は、ユニット「プラスチックペンギン」としての新曲であり、ボーナストラック扱い。このアルバムで受けた印象と異なるキラキラ光るテクノポップであり、m@sumiという作家の引き出しの多さに驚かされる。「初のソロアルバム」という触れ込みでここまでのモノを出してくるのだから恐れ入る。是非次のアルバムを出して欲しいところだが、それ以上にこの名盤が即売会限定頒布などではなく、通販や配信等の手段でより広い世界へ発信されることを願ってやまない。



(1) bermei.inazawa / berpop melodies & remixies Vol.2

リリース: 2014/04/27
通販: Amazon.co.jp
メロンブックス通販 / アニメイト通販

ハイレゾ配信:作者サイトにて(CD購入者にはハイレゾ音源無料配布)


鬼才bermei.inazawaの、9年ぶりとなるオリジナルアルバム。とはいっても、2012年にビクターからベスト盤「Chords」を出したり、2013年にanNina再始動シングル「ombre」をリリースしたり、サウンドトラックやアニメ主題歌等の楽曲提供(やなぎなぎ歌唱の「Ambivalentidea」は名曲だ)、マスタリング・レコーディング等のエンジニア仕事は精力的にしていたのだが、本人の完全なオリジナルアルバムは2005年の「berpop」第1弾まで遡る必要があった。第1弾をリリースした時点で第2弾のボーカル募集を出していたことから、制作自体は当時から行われていたことがわかる。そしてこのアルバムが完成するまでの道のりがいかに大変だったかも想像できる。イナザワはこのアルバムについて「ある日突然完成した」と語っている。いくつかの曲や提供リミックスを除いた、半分以上の曲が立て続けに出来上がったというのだから、相当のパラダイムシフトがあったのだろう。邪推するに、「ポップ」の在り方について考え続けていたが作品として結実せず、数年ものインターバルを経てふと”降り立った”のかもしれない。当アルバムの収録曲として2年前に先行公開された10曲目「カクテル」は、知人とのホームパーティーを題材にした(むしろそのまま描いた)大人向けの渋くハッピーな一コマを切り取った名曲なのだが、この曲は実に「ポップ」を体現していていると言える。これだけ振り切った曲なら間違いなくポップと言えるだろうが、そうでない普段のイナザワ曲は果たしてそうなのか。それに対する作者の答えこそがこのアルバムであると筆者は考えている。平たく言ってしまえば「いつも通りのbermei.inazawa」なのだ。05年の「berpop」1作目は、氏としては珍しいほどキラキラした曲が詰め込まれていて思わず目がくらむほどだった。それと比較すると、この「berpop」2作目の曲の大半は肩の力がいい具合に抜けており、普段のイナザワを期待していたリスナー(つまり自分のことだが)にとっても馴染みやすい1枚となっている。と言っても別に暗い曲ばかりというわけではなく、普段のイナザワ曲としては明るめであり、なんだか一部の曲は「明るいけど病んでいる」みたいなヤバげな雰囲気があって緊張感がある。さりげなくインスト曲が入っているのも個人的にはとても嬉しい。リミックス3曲(ESTi、mewlist、zts提供)も、イナザワ曲のオーラに負けず劣らずの個性を感じさせるGood Tracksだ。

また、このアルバムはCDの他に、24bit/96kHzのハイレゾ音源も用意されている。CD購入者には無料でダウンロード出来るようにするという中々のサービス精神を発揮している(おかげで筆者も堪能できた)。CD音源と聴き比べたブログ記事があるため、購入の参考にしていただければ。bermei.inazawaは、この「berpop2」を皮切りに同人活動の再活性化を宣言している。既に2014年冬コミ(C87)でも、大江戸宅急便とのコラボで童謡アレンジCDをリリース予定だ。いずれは同人ベストも出したいと言っているので、商業と合わせて氏の活動からますます目が離せなくなりそうだ。









あれっ・・・筆者の気に入ったアルバム、通販されなさすぎ・・・?