今年リリースされたサウンドトラックCDから10枚を選び、レビューを書きました。

※対象アルバム・・・2014/01/01~2014/12/19までの間にリリースされた、あらゆる媒体のサウンドトラック・アルバム。
※筆者の好み上、ゲームとアニメが中心になっております。
※順位に深い意味はありませんが、それなりに真剣に考えました。

【2014年ベストアルバムの記事一覧】

Vol.1 VOCALOID/UTAU20選 ・・・ 2014/12/19(金)公開
Vol.2 同人音楽10選 ・・・ 2014/12/20(土)公開
Vol.3 サウンドトラック10選 ・・・ 2014/12/21(日)公開
Vol.4 ロック・ポップス6選+電子音楽6選 ・・・ 2014/12/23(火)公開
Vol.5 今年出会った旧譜10選 ・・・ 2014/12/24(水)公開



 
(10) Elements Garden / モーレツ宇宙海賊 オリジナル サウンドトラック コンプリートCD-BOX

リリース: 2014/09/24
販売: Amazon.co.jp
配信: iTunes Store(劇場版OST)


よくぞ出してくれた!!と声を大にして言いたい1枚。TVアニメ2クール+映画1本の劇伴音楽をCD3枚にまとめた完全版のサウンドトラックだ。TV放送の要所で流され印象に残っているであろう名曲「大航海時代」を、1枚目の1曲目にいきなり持って来るのでとにかくテンションが上がる。「モーレツ宇宙海賊」という作品の設定上、ショーやスペクタクルという要素が中核に位置し、登場人物にもそれぞれ演じる役柄があるため、観ている側も劇中劇の観客になったような感覚になる。必然、このサントラもある意味での俯瞰視点からの音楽となり、「この場面にはこういう曲」という設定付けがものすごくはっきりしていることが分かる。そのため、アルバム全体を通して物語の起承転結が見えてくるので、アニメを観ている場合は特に、観ていなくてもそれなりに楽しく聴けるのである。ちなみに、iTunes Storeでは3枚のディスクがそれぞれ異なるアルバムとして発売されており、3枚とも買うとCD-BOXより高くなるという謎の価格設定となっている。単曲買いor劇場版BGMだけ買うならアリか。



(9) TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND / ウィッチクラフトワークス オリジナルサウンドトラック

リリース: 2014/05/21
関連: インタビュー記事


2014年冬アニメ「ウィッチクラフトワークス」の音楽を手がけたのは、海外レーベルよりCDリリースの経験もあるゴリゴリのテクノユニット、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND。通称テクノボーイズ。最初に名前を知ったのはAnnabelの2nd「TALK」に提供した曲だったが、あのエレクトロニカ路線はどうやらイレギュラーだったようで、このアルバムではハードシンセをふんだんに用いた質感ある硬派な電子音楽を堪能できる。とはいってもやはりこれはサウンドトラックなので、音のゴリ押しをある程度収め、場面を盛り上げるための叙情性も最大限取り入れられている。いくつかの静かな曲では、ピアノが軸となって曲の展開をリードする重要な役割を任されていたのが印象的だった。更には「テクノユニット」のイメージからは程遠いオーケストラ曲まで収録されており、しかもかなり良かったのでいい意味で予想外だった。それでもテクノしているところはちゃんとテクノしているので(頭の悪い日本語)、テクノユニットとしての新譜とサウンドトラック・アルバムの両方のアイデンティティを表すことに成功している、との印象を抱いた。2枚組59曲の中で手を抜いた曲は1つもなく、ちょっと一筋縄ではいかないアルバムだ。それにしてもエンディング曲「ウィッチ☆アクティビティ」はテクノとしても電波ソングとしても正しい名曲(迷曲?)だ。さらに、このアルバムの面白さはブックレットにもある。全曲のトラックリストや作曲者のコメントのみならず(これがあるとサントラの楽しみが倍増するのだが無い場合が多い)、作曲者のテクノに関する持論や曲の作り方が、使用している機材の画像付きで解説されているのだ。おそらくはビギナー向けの議論に抑えられていると思うのだが、テクノに詳しくないアニメ視聴者にとってはかなり刺激的な体験になるのではと考えている。作曲者の挟持というか、テクノへの情熱が中途半端ではないことがよく分かる素晴らしいブックレットだ。



(8) 牛尾憲輔 / ピンポン オリジナルサウンドトラック

リリース: 2014/11/26
配信: iTunes Store / Amazon MP3
ハイレゾ配信: mora


2014年春アニメ、ノイタミナ枠のアニメ「ピンポン」のサウンドトラックが11月に遂にリリースされた。手がけるのは、テクノ寄りの電子音楽を得意とする牛尾憲輔だ。agraphの名義で長く活動している正真正銘のアーティスト畑出身だが、「ウィッチクラフトワークス」主題歌のリミックスをするなどアニメ畑との接点もある。牛尾憲輔およびagraphの作品は寡聞にして詳しくないのだが、このアルバムを聴いているとテクノとしてはビートが抑え目で、代わりにベースやシンセが曲展開を引っ張っているように感じられる。中には10曲目「Butterfly Joe」のように、ビートやベースの役割をピアノが全て演じた編成でありながら、確かにテクノの文脈で構成されていることを感じさせる驚愕のトラックもある。音楽ジャンルというものは時が経つにつれその定義が曖昧になっていくものだが、牛尾憲輔の音楽は極めて多様な音・楽器を用いていながらテクノというジャンルとして聴くことが可能となっており、まさにジャンルの進化の先にある音楽と言えるのではないだろうか。その中でもとりわけ、13曲目「Ping Pong Phase」と38曲目「Ping Pong Phase2」は異色だ。このアルバムはタイトル通り卓球アニメのサウンドトラックなのだが、この曲は卓球玉が卓上で跳ねるカコン、カコンという音をそのまま使ってテクノにしてしまっており、あまりの卑怯さに(褒め言葉)つい吹き出してしまった。なお、このアルバムはCDではリリースされておらず、iTunes StoreのAACやAmazon MP3(非可逆圧縮)、そしてmoraのハイレゾFLAC(24bit/48kHz)で配信されている。手頃な価格ならAACやMP3、音質を求めるなら(あるいはCDで聴きたかったリスナーも)ハイレゾで購入するといいだろう。最後になったが、このサウンドトラック、どうやら完全版ではないらしい。メインテーマである2曲目「Hero Theme」は再生時間ちょうど2分と尺は短いが、インパクトもあり作品の要所で効果的に流れる重要な曲だ。どうやら、この曲の”フルバージョン”が制作されているのだという。しかし噂によると、「3万円の商品を買ってくれたらフルバージョンを聴かせてやらんでもない」と吹いて回る団体がいるらしいのだ。真偽は定かではないが、真実だとすれば言語道断、プレミア感を煽ってCDアルバム10枚分もの金を払わせ、リスナーの財布を極寒の地に陥れる何ともあくどい商売だと言わざるを得ない。



(7) ききやま / ゆめにっきサウンドトラック ~ゆめのおと~ 完全版

リリース: 2014/08/31
販売: Amazon.co.jp
非圧縮配信: OTOTOY(第1弾/第2弾)


ニコニコ動画で初めて「ゆめにっき」のプレイ動画を見て、何となく知っていたつもりの「ゲーム」というものの更に深い領域に触れたのはもう7年も前の出来事だ。そんな「ゆめにっき」のメディアミックスが2014年になってひっそりと、しかしエネルギッシュに進められていった。マチゲリータによるイメージシングルを起爆剤としてマンガ・小説が次々と発売され、そして遂に本家ゲームのサウンドトラックがリリースされた。このアルバムは2枚組となっており、1枚目は作者・ききやまによる55曲を収録したものだ。各曲きっかり1分なのでディスクの再生時間は1時間程度だが、「ゆめにっき」を実際にプレイした、あるいはプレイ動画を見た人ならその1時間がどれほど濃い1時間になるかは容易に想像できることだろう。全体として、一聴してゲーム音楽だとはすぐに信じられないような、ローファイなドローン・アンビエントに支配されている。比較的明るめの曲であっても、8bitを軸にした物悲しいメロディが脳に焼き付いて忘れられない。「SIREN」等の洗練されたホラーゲーム音楽とはまた違う、荒削りで先鋭的なセンス。BGMの二次創作アレンジが数多く公開されていることから考えても、「ゆめにっき」という作品はゲーム音楽のシーン全体を語る上で、決して無視できない立ち位置にあると筆者は確信している。2枚目は”∞INFINITY”というアーティストによるアレンジアルバムとなっている。本家サウンドトラックに他人のアレンジアルバムが同梱される構成に最初は眉をひそめたが、蓋を開けてみるとこれが実に良いものだった。原作の郷愁あふれるメロディを存分に活かし、美しいエレクトロニカに仕上げた1曲目「ゆめにっき」をはじめ、原作の雰囲気へのリスペクトを最大限に込めて、かつアレンジャー自身の世界をも表現するという、ともすれば失敗することの多いアプローチに成功していると筆者は感じた。本家と同じパッケージに収録される、という時点でリスナーの用意したハードルがかなり高くなっていることは想像に難くないが、そのハードルを正面から乗り越えたこのアレンジアルバムには心からの拍手喝采を送りたい。とても良いボーナスステージだった。



(6) 妹尾武 / いなり、こんこん、恋いろは。 オリジナルサウンドトラック

リリース: 2014/03/26
販売: Amazon.co.jp


「お、ARIAの妹尾武さんか」と、軽い気持ちで手に取って聴いてみたら大当たりだったという、この冬放送されたアニメ「いなり、こんこん、恋いろは。」のサウンドトラック。まずアルバムの冒頭に、つじあやの作曲・大空直美歌唱のキャラクターソング「涙はらはら」が配置されている時点で異色だ(しかもこれは番組後半の第10話で使われた曲だという)。そしてそれが作品全体の方向を示す本当に素敵な曲なのである。続く2曲目「天空の郷」もまた素晴らしい。作品冒頭で舞台風景を描写するための音楽なのだが、他作品の類似のシチュエーションでの音楽と比べると「格の違い」を実感する。まずメロディの重みが違う。そしてストリングスの鋭さと深さが別格だ。おそらくオーケストラも豪華な編成で、録音環境も良好なのだろう。この2曲に惚れたら、あとはどっぷり浸るだけだ。サウンドトラックは、当然ながら場面を盛り上げるための音楽であるわけだが、本当に良いサウンドトラックは場面に添えられるだけでなく、それ自体が独立して物語を紡ぎ始める。なので、そうした良いサウンドトラックは、物語を伝える大事な語り手としての役割をも担うことが出来るため、アニメ作品へリスナーを誘う切っ掛けとしても重要な立ち位置にあるのだ。そしてこのアルバムは音楽だけでなく、ジャケットイラストにも味がある。木々に囲まれながらピアノを弾くダンディは間違いなく妹尾武本人だろう。そして、その演奏に聴き入る主役の二人。こういう、キャラクター推しでもない、キャラクターを排除したでもない、それでいてサントラらしさを出した絶妙な構成のイラストはまさに会心の出来と言えるだろう。



(5) 増田俊郎 / 蟲音 続

リリース: 2014/06/25
販売: Amazon.co.jp


8年ぶりに2期が放送される、という息の長いアニメ「蟲師」。そのサウンドトラックもまた、8年前と変わらぬ魂をもってリリースされた。この音楽をジャンル分けするとしたら、一体どのようになるのだろう。ここで使われる楽器は、電子音と民族楽器の中間のように聴こえ、ふとした拍子に一体"どちら側"なのか分からなくなる。このつかみ所のない、しかし間違いなく美しい音色は、生命とも生命でないものとも言える「蟲」の存在を描写する上でうってつけなのかもしれない。このアルバムには、2期本編より先に放送された特別編「日蝕む翳」のBGMも収録している。その最も印象的な日蝕のシーンが、セリフも効果音もなくただ音楽と映像のみで表現されるため、音楽が極めて鮮烈に印象に残るのだが、その曲「日蝕む翳」がいきなり1曲目に置かれているのだからたまらない。新曲の他にも1期BGMのアレンジが数々収録されており、知っている人も多いと思われるあのテーマ曲のアレンジが見事だった(8曲目「蟲師・続章」)。最初は特に違いを感じなかったのだが、1期サントラと聴き比べると全く異なる事がわかり、1期とほぼ同じ楽器・音色を用いて同じ曲をアレンジしているというのに、ここまで違いを出せるのかと思わず感嘆してしまった。アレンジというものは本当に奥が深い。余談だが、その1期サントラは長らくプレミア化していたのだが、2015年1月ついに再販されることとなった。これはマストバイである。



(4) 岡部啓一・MONACA / 結城友奈は勇者である オリジナルサウンドトラック

リリース: 2014/12/10
販売: Amazon.co.jp


5人の可愛い女の子が、世界を滅ぼさんとする悪と闘いつつ絶望に苛まれるアニメ(意訳)のサウンドトラック。名作ゲーム「ニーア ゲシュタルト&レプリカント」と同じ作曲家がサウンドを手がけ、同ゲームでボーカルを担当したEmi Evansも参加するという触れ込みで、かつバトル曲を中心に収録するということで大いに期待していた一枚だ。「ニーア」シリーズを手がけた岡部啓一・帆足圭吾・石濱翔の3人に加え、同じMONACA所属の高橋邦幸の4人による共同制作となっており、期待以上に統一感のあるアルバムだった。作曲担当が4人いる大所帯サントラだが、各々の得意分野を持ち寄ったという色は比較的薄く、ひとつの世界観に基づいた熱くもクールなバトル曲を存分に堪能できる。それにしても、2014年は今作のEmi Evansといい、「アルノサージュ Genometric Concert」のOrigaといい、サウンドトラックにおけるボーカリストの力というか、曲ひいてはその曲が流れる場面の方向性を決定づけて引っ張っていく力に驚かされる、そんな作品と出会うことが度々あった。むやみにインストで固めるだけでなく、歌モノを効果的に使用してこそのサントラである・・・と言いつつこのアルバムに収録された主題歌「ホシトハナ」をよく見ると、なんと歌なしのカラオケバージョンだった。声優さんの歌だけど、この重厚な音楽からは決して浮いてはいないと思ったけどなあ。更には、このアルバムには「大団円」に当たる音楽がないことも気になった。発売時点でまだ完結していないからネタバレ回避に入れていないのだろうけど、このままじゃ「ラストバトルの決着が付きそうだけど付かないかもしれない」という一番盛り上がる場面でお預けを食らっているようで非常に悩ましい。以上の2点がこのアルバムの不満点だが、それを差し引いても曲ひとつひとつがどれも熱くてクール(2度目)であり、好みのツボを刺激してやまないのだ。本当にいい仕事をしていると思う。



(3) 柳川和樹・阿知波大輔 / アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~ オリジナルサウンドトラック

リリース: 2014/03/05
販売: ガストショップ
配信: iTunes Store / Amazon MP3


「アルトネリコ」「シェルノサージュ」に続くヒュムノスシリーズ最新作のサウンドトラック。正直、このシリーズは劇中歌集にばかり力を入れていて、そうでない曲はイマイチという印象があったのだが、アルノサージュに関してはサントラもやたら評判が良かったので気になって購入。結果、予想をはるかに超えた大当たりだった。オープニングテーマは志方あきこによるゴリゴリのサイバー民族調、これはもうシリーズ通してのお約束と言えるものとなっている。その他の曲も、印象に残るはっきりしたメロディ、反復に耐える堅実なアレンジ、じっくり鑑賞できるある程度の尺と、サントラとして理想的な条件が揃っているのである。特に序盤から「碧き方舟」「緑陰の蛍」「虹の伽藍」などといった名曲が続くのでぐいぐいと引き込まれる。アルバム前半の阿知波大輔は本当にいい仕事をしている。しかし、このサントラを名盤たらしめる一番の要素はDisc 2の1曲目「Minakata」(阿知波大輔)と2曲目「Mikazuchi」(柳川和樹)だ。2曲とも、バイオリンとエレキギターが代わる代わるソロパートを演奏するという構成なのだがこれがとてつもなく熱い!およそゲームBGMらしからぬ暴れっぷりを見せており、双方負けじと張り合っている様はまさに「音楽バトル」である。ギターとバイオリンが同時に演奏する箇所がないため、互いにバチバチと火花を散らしている対立の構図がありありと浮かびとにかく盛り上がる。心に残るサウンドトラックは、こうしたキラーチューンが必ずと言っていいほど収録されており、何度も何度も聴きたくなるのだ。今年一番良かった”サントラの曲”を挙げるなら、迷わず「Mikazuchi」を挙げるだろう。なお、このCDはアマゾンの在庫がすでに引き払われていて、マーケットプレイスでは少々高くなっているため、制作会社・ガストのオンラインショップから直接買った方が送料込みでも安いのでオススメである。



(2) 菅野よう子 / 残響のテロル オリジナル・サウンドトラック

リリース: 2014/07/09
販売: Amazon.co.jp
ハイレゾ配信: mora


渡辺信一郎監督・菅野よう子音楽の無敵コンビによる、2014年夏アニメ「残響のテロル」サウンドトラック第1弾。このアルバムは色々と凄い。1つ目に、特設サイトが凄い。「Darker Than Black」の時も、監督を差し置いて一番最初に菅野へのインタビューが公開されたように、菅野よう子のネームバリューは次元が違う。特設サイトにはトラックリストと試聴リンクに留まらず、極めて長いライナーノーツも掲載されている。そこには、このアルバムが出来上がるまでの過程がまるで紀行文のように記されており、マスタリング等の工程を含めるとこのアルバムは完成するまでに世界一周しているらしい。恐ろしいスケールだ。2つ目に、半数ほどの曲がアイスランドで録音されているのが凄い。残響のテロルという作品に合うような、北国の冷たい感じを出したかったと作者が述べていることから、現地のボーカリスト・作詞家を招いていかにもな寒色ポストロックを作り上げている。ちなみに、アイスランド語の作詞は非常に難しいらしく、母語話者ですら一般人には出来ないため通常は専門職としての作詞家に依頼するらしい。そして3つ目に、「菅野サントラ」が各作品で放つリアリティが、今作でも遺憾なく発揮されているのが凄い。ポストロックというアニメサントラでは馴染みのないジャンルに、適度に叙情性をふりかけて劇伴音楽としての役割を担わせることは重要なステップだ。だが、サントラ制作に日本原産ではないジャンルを持ち込む際、他の作家ならいかにも日本の音楽を聴いて育った人間が作ったような、「民族衣装を羽織った日本人」のような曲になるものだが、菅野よう子はまずその音楽を奏でるための血や骨、人生を作るところから始めており、あたかも「日本のアニメ音楽を熟知している現地の音楽家」が作ったかのようなリアリティを体現しているのだ。つまり、菅野よう子は音楽で世界を彩る際に動員する想像力の総量が、他の作曲家をはるかに凌駕しているのである。作れるジャンルの引き出しの多さは想像力の桁の違いに他ならず、絵本を読んでその世界を夢を見る少女が、精神と技術の双方を極限まで磨き上げた結果生まれたモンスターが「菅野よう子」というひとつの現象なのだ。

菅野よう子本人は、サントラ仕事について「制限があったほうが燃える」と語っていたことがある。それはつまり、制約・条件という「種」を撒くのは他人に任せたい、あとは育つのを待ってて欲しいという制作スタイルの表れであり、それは菅野よう子というきわめて肥沃な土壌への信頼なしにその実力を引き出すことは不可能であるという、自らの技量への絶対的な自信を示したように思えてならないのである。「残響のテロル」という種は、これだけ素晴らしい果実を実らせた。作品では、登場人物すべてがどうしようもない未熟さを抱え、結論として起こってはならない事が起こってしまった。その行き場のないやるせなさに寄り添い、悲しい結末を受け入れさせ、悲劇に浮足立った足をそっと地面に降り立たせ、新たな段階へと進ませるための音楽、それが菅野よう子がこの物語に対して与えたひとつの「生き方」なのである。



(1) 植松伸夫・成田勤・岩佐樹 / グランブルーファンタジー オリジナルサウンドトラック

リリース: 2014/08/15(C86先行販売)
販売: Cygames直販


植松伸夫(編曲:岩佐樹)と成田勤の3人による、Cygamesのソーシャルゲーム「グランブルーファンタジー」のサウンドトラック。ノビヨが絡んでいるだけあって音楽のクオリティは随一。このアルバムは基本的に前半が植松、後半が成田の曲という構成なのだが、通して聴くと両者の作風の違いが明確に表れている事がよく分かる。FFで例えるなら、前半は植松時代のメロディが軸となる柔らかな曲調であるのに対し、後半は植松が離脱して以降の(特に13の一連のシリーズ辺り)硬質さが際立ってくるのだ。そういう意味では、「植松といえばFF」という人にこそ聴いて欲しいアルバムである。まず植松のキャッチーさでリスナーの琴線をピンと弾いた後、硬派な成田節を繰り出してハートをがっちり掴む流れは実によく出来ておりニクい(褒め言葉)。しかし成田勤の担当パートにも、13曲目「アウギュステ列島 -白沫の瀑布-」のような突出して美しいメロディが現れるので気を抜けない。アルバムのラストを飾る20曲目「天に散りし覇者との邂逅」などは、ピアノとオーケストラが圧倒的なパワーとプログレ的な反復で畳み掛ける力強いトラックであり、”眼前にそびえ立つ雄大な何か”の存在を匂わせてくる。この曲はあたかも、プレイヤーの旅路が半ばであり、あれから遠くまで来たが到達点は未だ果てなく遠いことを示しているかのようだ。この”圧倒的To Be Continued感”を残したまま、このアルバムは一旦幕を閉じる。現在進行形でアップデートを続けるゲームのサウンドトラックとして、これほど理想的な締めがあろうか!それだけに、これほどの名盤がCygames直販でしか流通せず、また期間限定販売と銘打ってしまっていることがあまりにも惜しい。

このアルバムと先の「残響のテロル」サウンドトラック、どちらも今年リリースされた中では特に気に入ったアルバムであり、いざ順位をつける際にどちらを1位にしようか大いに悩んだが、個人的にグッと来たキラーチューンの占める割合が「グランブルーファンタジー」の方が多かったことから、こちらを2014年ベスト・サウンドトラックとさせて頂いた。