「たとえ世間で名盤と讃えられてきたものだろうと、長年駄作と罵られてきたものだろうと、私が今初めて聴いたのであれば、それは私にとって新譜なのである。」

2014年現在「旧譜」として扱われているアルバムのうち、筆者が今年初めて聴いたものから10作を選び、レビューを書きました。
「2014年ベストアルバム」番外編としてお楽しみください。

※対象作品・・・2013/12/28より前に発売された、あらゆる媒体のアルバム。
※今回は特に順位は付けていません。
※連日の更新で筆者のHPは既にゼロになっているため、今回のレビューは極めて簡素になっています。ご了承ください。

【2014年ベストアルバムの記事一覧】

Vol.1 VOCALOID/UTAU20選 ・・・ 2014/12/19(金)公開
Vol.2 同人音楽10選 ・・・ 2014/12/20(土)公開
Vol.3 サウンドトラック10選 ・・・ 2014/12/21(日)公開
Vol.4 ロック・ポップス6選+電子音楽6選 ・・・ 2014/12/23(火)公開
Vol.5 今年出会った旧譜10選 ・・・ 2014/12/24(水)公開



植松伸夫 / PHANTASMAGORIA

リリース: 1994/10/26
販売: Amazon.co.jp


作曲家・植松伸夫初のソロアルバム。FFの曲も1曲ひっそり入っているようだが(しかもそれなりにレアなトラックらしい)、自分のおすすめは1曲目「雨の日、子供たちは」等の語りが入った曲。ジャケットのような寂寞な光景に灯る、生命の明かりのようなぬくもりを感じた。職業作家としてのイメージを大きく覆す、極めてアーティスティックなアルバムだ。あと、ジャケット撮影にかなりお金をかけていそうなところにも時代を感じる。



深水チエ / 花の涯

リリース: 2010/04/15
販売: Amazon.co.jp


同人音楽を中心に活動する歌手・深水チエの商業流通ミニアルバム。坂口安吾の小説「桜の森の満開の下」をベースに、7曲の物語音楽を紡いでいる。妖艶なボーカルに色気のあるピアノはまさに極上の味わい。不勉強ながら小説は未読なのだが、このアルバムのサウンドからも「ひと繋がりの物語」を感じ取ることが出来た。きわめて密度の高い、どろどろとした歌からは、もはや自他の境界線を取り払ったアンビエンスすら見て取れるのである。酒と一緒に是非。



bermei.inazawa / SoulS

リリース: 2004/02/21


あのbermei.inazawaの同人初期のベストアルバム。前々から存在は知っていたのだが、いかんせん10年も前の同人CDなので入手経路が限られており、いざ見つかってもプレミアが付いていたため手が出なかったのだが、ここ最近は中古価格が(気持ち)下がったので思い切って購入。「コンピューターおばあちゃん」「翼を下さい」「ヒポポタマス」等、イナザワ同人の代名詞とも言える超個性派カバー曲も入っている。初のオリジナルアルバム「/Campanella」からも数曲入っているが、こちらは現在本人によるデータ販売が始まっているので持っていないひとは公式サイトへGOだ。企画モノの合作CD等、本人名義のCD以上のレア盤からもきちんと収録されているため、結構かゆいところまで手が届くのである。



上原ひろみ / SPIRAL

リリース: 2005/12/27
販売: Amazon.co.jp


恥ずかしながら今年になってようやく上原ひろみを聴き始めた。中でも特に気に入ったのがこの1枚。ツ◯ヤにもジャズカテゴリに置いてあるため、どんなジャズかなと期待して聴いてみたらプログレじみパワフルロックだったでござる。あれおかしいな、バンド編成はジャズのはずなんだけどな・・・。



高木正勝 / タイ・レイ・タイ・リオ

リリース: 2009/06/17
販売: Amazon.co.jp


知っているひとは知っているであろう、高木正勝の文庫本付きオリジナルアルバム。その文庫本とは、このアルバムで題材としている各文明の神話・民話を蒐集した「タイ・レイ・タイ・リオ紬記(ちゅうき)」である。芸術人類学と神話学の大学教授・石倉敏明による監修なので「本物」である。



上野耕路 / ファンタジックチルドレン O.S.T. ~ギリシアからの贈り物~

リリース: 2005/01/21
販売: Amazon.co.jp

アニメ自体は結構前に観ていたのだが(名作である)、サウンドトラックの3曲目「べフォールの子供たち」が名曲であるとの評判を今年に入ってから聞いて入手した。サントラとしては異例の7分48秒もの長尺でじわり、じわりと不気味な情景を映しつつも、チェロとピアノの美しい音色に釘付けになってしまい、やはり素晴らしい曲であった。主題歌「Voyage」等のボーカル曲の歌の部分をチェロ独奏が担当するトラックもまた美しい。特にグッと惹かれる曲ではとりわけチェロが印象に残る結果となった。チェロは好きなので個人的には何の問題もない。




小西香葉・近藤由紀夫 / エルフェンリート Original Soundrack (Blu-ray BOX盤)

リリース: 2012/12/19
販売: Amazon.co.jp


ニコニコ生放送の一挙放送を観終えた直後、ほぼ衝動的に買ったブルーレイ・ボックスになんとサウンドトラックCDが付いていたので驚いた。もはや伝説の主題歌「LILIUM」がアニメの歴史に残る名曲であることは今更言うまでもないことだが、それ以外のBGMもかなり聴き応えがあり特典にしておくのが惜しく思えた。なお、「LILIUM」にフルバージョンは存在しないようだが、作曲者のユニット「MOKA☆」のアルバムにはセルフカバーという形で長尺のバージョンが収録されているらしい。



London Philharmonic Orchestra / The Greatest Video Game Music

リリース: 2011/11/8
販売: Amazon.co.jp


世界有数のオーケストラ、ロンドン・フィルがゲーム音楽を演奏した!日本のゲームといわゆる洋ゲーが半々で収録されており、どれも名演なのだがやはりそれぞれの曲の作りの違いがよく見えてくる。日本のゲームはヒーローもののファンタジーに相応しい勇ましくキャッチーなメロディ、洋ゲーは戦争ものが多いためか荘厳で空間重視の曲が多い。それぞれのプレイヤーがゲームに求めているものの違いが表れているのだろうか。



桜庭統 / What's Up?

リリース: 2013/04/10
販売: Amazon.co.jp


ゲーム音楽家・桜庭統のオリジナルアルバム。前年に「after all」というアルバムを極少量頒布しており、そこに未発表曲を追加して全国発売したものだ。形式美と勢いを両立させたプログレッシブ・ロックで満ちており、桜庭統の音楽に求めていたもの全てが詰め込まれた名盤である。サントラもいいが、個人的にはオリジナルアルバムの方が好みかもしれない。



ぱっちりひつじ / ゆめにっき①

リリース: 2012/09/22
販売: ヴィレッジヴァンガード通販


2014年秋のM3で購入。男女ツインボーカルとイラストレーターを含む7人の大所帯バンドだが、活動コンセプトが面白い。この1stアルバム「ゆめにっき①」は、すべて実際に見た夢をモチーフとしている。それを時におどろおどろしく、時にドリーミーに音楽にしたためているのだが、基本となる音楽性が粘度の極めて高いプログレッシブ・ロックなので最初から最後まで非常に濃い。せっかくオリジナルなのだし、委託販売やら配信やらでもっと広く売り出せばいいのにと思いつつも、こうした音楽を「発掘」した時の喜びもまた捨てがたいものがあり悶々としてしまうのは性なのだろう。







旧譜といいつつ10年代のアルバムが多く、20世紀のアルバムとなるとノビヨしかなかったところに、普段の自分のレパートリーが表れているようでなんだか気恥ずかしい限りである。