C87で買ったCDのレビュー、3本目はchiepomme(ちえP)が今年出したミニアルバム3枚を一気にお届け。
コミティア中心に参加されていて通販もなかったため、なかなか手にする機会がなかったCDです。

メルヘンチックで遊園地みたいなワクワクポップス、かと思いきやそのサウンドメイクは極めて技巧的。和音の使い方やメロディラインの独特さ、曲展開の巧みさを存分に見せつけながらも、あくまでポップスの姿勢を保つそのセンスは他の追随を許しません。

2014年にリリースしたミニアルバム3枚は、いずれもちえP自らボーカルを取った作品です。これがもう本当にずるいほど曲調とマッチしていて、上手い下手に関係なくがっちり「ハマってる」んです。しかも、これから紹介する3枚はどれも方向性が違っていて、聴き比べると非常に面白いので全部おすすめです。

■今回紹介するCD■
chiepomme / little birds flying over the stars
chiepomme / shadowy chamber
chiepomme / star recreation



chiepomme / little birds flying over the stars

リリース: 2014/05/05
ジャンル: メルヘンポップス
販売: 即売会・Bandcamp


作って歌うシリーズ1作目となるCD。1曲目「little bird in the cage」はわずか40秒の小品ながら、歌詞とボーカルもついてちゃんとボーカル曲として成立している。2曲目「twin stars」は、技巧とメロディが複雑に絡み合った、いかにもちえPなポップスが凝縮されている。chiepomme/ちえPの新たな代名詞となるような曲だ。3曲目「flapper」はピアノソロ。1分半と短いインスト曲とは思えないほど、各所のフレーズが耳に残る。4曲目「autophobic stars」はピアノ主体のボーカル曲。各パートが気持よくスウィングしているジャズチックなナンバーだ。・・・あれ、ちえPって基本的に打ち込みだよね?なのにこの楽器の音のリアリティはどういうことなんだぜ?特にベースのうねりとかドラムのハイハットの余韻とか相当生演奏に近い音なんだけど、あとピアノもすごく透き通った音色がとても打ち込みとは思えないんだけど、一体全体どういうことなんだぜ???5曲目~7曲目はボーカル曲のインスト版。

総じて、「ちえP」を知っているリスナーなら全く違和感なく聴けるであろう1枚。この明るさには、古参であればあるほど腑に落ちるかもしれない。ボーカルについては、当時はまだ本当に始めてばかりで歌も試験的に収録したと本人は語っていたが、作風との相性がここまで良いとは思いも寄らなかった。誰がなんと言おうと、このCDに関しては試みは大成功だったと筆者は確信している。



chiepomme / shadowy chamber

リリース: 2014/08/31
ジャンル: メルヘントロニカ
販売: 即売会・Bandcamp


作って歌うシリーズ2作目のCD。1曲目「nocturne」は短調の物悲しいピアノにシンセストリングスが絡み、さらにサビ以降激しいビートが加わることで徐々にボルテージを上げていく、非常に熱い展開となっている。2曲目「monochrome」は更に電子音楽への傾倒が深まり、ボーカルはエフェクトの奥深くに埋もれてかすかにしか聞こえない。ピアノの鍵盤の一打から、波紋が広がるようにきれいな音の粒子が広がってゆく、まさに夢見心地のような小品だ。3曲目「bottled fairy」は、6拍子で少しジャズ要素が加わる。が、あくまでジャズバンドがこのアルバムの雰囲気に合わせて、マイナーでメロウな曲を演っているといった設定のドリーミーな曲だ。少女向けアニメ内で流れるミュージカル風の曲、と例えることが出来るかもしれない。筆者は、ちえPがだいぶ前にリリースした「プリンセスチュチュ」のアレンジアルバムを想起した。あれもいいアルバムだった。

1作目と比べて電子音楽に強くシフトしており、力強い曲も穏やかな曲も総じて幻想的なサウンドに包まれている。まさにこのアートワークから想起し得るであろうイメージで間違いないと思われる。全体の主役はピアノが担っており、純粋なエレクトロニカに苦手意識を持っている人でも気持よく聴けるのではと思う。それにしても「nocturne」のサビの展開は神がかっている・・・。



chiepomme / star recreation

リリース: 2014/11/23
ジャンル: メルヘンロック
販売: 即売会・Bandcamp


作って歌うシリーズ3作目。1曲目「perfectionistic angel」はスタンダートなジャズナンバー。ストリングスが割と早い段階で絡むのと、ボーカルが若干前に出て来ているので、比較的インパクトの強めな印象を受ける曲だ。2曲目「dark infection」はロックナンバーだ。ドラムの強さやキーボードの速弾き、ボーカルの音符の割り振り方は、いわゆる「高速ボカロック」を若干彷彿とさせるが、サビ前はまだそこまでロックしていない。しかしサビが来ると途端に豹変する。歌が途切れることなくサビへ突入すると同時にギターとドラムが爆発!!!何度聴いても度肝を抜かれる、凄まじい展開だ。3曲目「star angel」は軽めのインタールード。4曲目「star recreation」は2曲目と違い最初からロック全開だが、全体のトーンは明るめだ。しかしこのタイトル曲でこそchiepommeの技巧が最も光っているのである。特に最初のサビ以降の展開は波乱だ。曲調がところどころで急ブレーキがかかったように総崩れになる。それも何度も。最後はあるべき場所へ収束するのだが、それまで一度も目(というより耳)が離せない。このアルバムでは最長の3分45秒なのだが、体感時間は極めて長く感じる。普通のロックナンバー2,3曲分のパワーが込められたキラーチューンだ。

chiepomme/ちえPは、実はそれほど低くない頻度でロックを作ることがある。同人でリリースしたEP「chienoir」は、そういったハード目の曲を中心に収録した、聴き応えのあるミニアルバムだ。この「star recreation」では歌い方も少し変えているらしく、ハードなロックとアニメ声寄りの可愛い歌声の組み合わせは非常に新鮮だ。しかし、ロックとはいってもchiepommeならではのメルヘン要素が随所に散りばめており、アートワーク通りの「天から降ってくる音楽」のイメージとの違和感も感じられない、なんというかすごいアルバムだと思う(小並感)。



総評。
大事なことなので何度でも言うが、作曲の作風と歌った時の声質が合っているのは本当に凄い!そして、アルバムごとに作風を変えても個性が全くぶれないのも凄い!本人は歌に自信がないとか何とか言ってるようだが、現段階でこのクオリティなのだから、歌唱技術を更に磨いたらものすごい曲が出来るのではないかと筆者は思う。インディーズレーベルからのCDリリースも決まっているので、これから発表されるであろう曲が本当に楽しみで仕方ない。

最後に。
2014年のchiepomme/ちえPは、今回紹介した3枚のミニアルバムだけでなく、2枚組ベスト盤「Couverture」も同人CDとしてリリースしている。これが質・量ともにとんでもないことになっており、会場限定とハードルは少し高いが入手する価値は十分すぎるほどあることを改めて強調しておく。この記事の一番下に以前ショートレビューを書いたので、興味ある方は是非。