C87で買ったCDのレビュー、9本目はMilliRobo.beta 2年ぶりのアルバム「大人のミリロボベータ」。

サークル主宰でありコンポーザーの園山モルは、ボカロP「盛るP」として非常に前衛的で攻めたサウンドのニューエイジ・ポップスを世に出し、リスナーを阿鼻叫喚の極楽三昧に誘ったことがあります。代表作の「ハイセンスナンセンス」は知っている人も多いことでしょう(→動画リンク)。

ボカロの活動が一段落した後は歌い手「マリネ」とともにMilliRobo.betaを結成。2012年冬には初のミニアルバム「ミニロボベータ」をリリースしています。その後私生活が多忙となり活動を縮小したものの、創作活動は続けておりこの冬ついに2年ぶりの2ndミニアルバムをリリースしたのです。




MilliRobo.beta / 大人のミリロボベータ

リリース: 2014/12/30
ジャンル: ニューウェイブ
販売: とらのあな

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一言で言うなら「園山モル、健在!!」。いやあ、まさかここまで変わっていないとは思わなかった。 極めて強烈なシンセサウンドは強いて言うならニューウェイブ、ゴリッゴリのテクノが自由奔放に空間を乱反射する様は一聴しただけで圧倒される。しかも、そのサウンドがあまりに尖っているものだから、一線も二線も超えて完全に突き抜けてしまったためかえって取っ付き易くなってしまっており、そこには「ポップス」の香りが漂っているという超常現象が起きているのである。何度聴いても理解が追いつかないし、その音使いに「慣れる」ということが出来ない、けどとても楽しい音楽。何度聴いても、最初に聴いた時の衝撃を味わい続けることが出来る、濃密で気持ちの良い音楽がここにはある。

そして、ボーカリストのマリネも相変わらず切れ味抜群!!ロリータ一直線の萌え声だけども、この轟音テクノに埋もれないどころか完全に一体化しており、もはや「ロリータ・ロック」と呼ぶべき骨太さをも感じるとてつもない声質をしている。悶絶モノの歌声からあざとさの塊のトークまで、一片のブレもなく完璧にこなすスキルの高さには思わず脱帽。これも、このユニットを最初に聴いた時の印象からずっと変化しておらず、曲だけでなくメロディや歌詞の内容まで常軌を逸している園山モルの作品を120%歌い切る相性の良さは、もうこの人以外のボーカルは考えられないとまで思うほどなのである。

このアルバム「大人のミリロボベータ」は全4曲収録。このタイトルや、色気を全力で演出したジャケットイラストには、「大人の人生を楽しく過ごして欲しい」との意図が込められているようだ。うむ、よくわからない。だがこのエロいジャケットの印象に違わぬエロい曲も一応は入っており、4曲目「タヂウ人格」は一部にエロい演出が加えられている。ちなみにこの曲、「盛るP」として公開したVOCALOIDオリジナル曲のリメイクでもあるので、初音ミク歌唱版を動画で楽しむことも出来る(→動画リンク)。

そして歌詞カードを読んで気づいたのだが、このアルバムに入っている4曲には共通する設定がある。1曲目「ゼンマイ・イン・マイ・ハート」は未熟な技術で生み出されたロボットの話で、2曲目「タチマチ・エラー」は世界はバグで満ちていると孤軍奮闘する人の話、3曲目「ポルカ、また年が明けたよ」は記憶喪失の話(アルバムリリースが年末なので時節に合った曲でもある)、4曲目「タヂウ人格」は多重人格のようなそうでないような話。ネタバレ回避のため要の部分は端折ったが、要は4曲すべてで「欠陥」というテーマが基盤となっているのだ。それも、心を持ったロボットだったり多重人格だったりと、いずれも極端な形で表現されており、非常に尖っている。述べた通り、どの曲もとてもポップで明るく歌われているのだが、反面歌詞のストーリーはどれもバッドエンドに終わってしまっている。そのギャップのためか、悲劇性を演出することはなく、むしろ笑いながら死んでいくような狂気が醸し出されているのだ。

この作品からは強烈な「社会性」を感じる。それは、歌詞の世界において絶対的に不幸な主人格たちへ、不可避的に感情移入をしているからなのかもしれない。そこまでのめり込ませるだけの世界観を構築できているというところも、素直に賞賛したい。しかしそれでも、筆者はこのアルバムにはこれと言った社会的なメッセージが込められておらず、唯一無二の娯楽作品として孤高のクオリティを体現した作品であるという意見を貫いていきたい。「社会性」のように見えるものは決して使命に燃えて描かれたものではなく、ただリスナーがこの作品の持つ狂気を受け止めきれずに、何らかの意味付けをして防衛したくなってしまう本能の表れなのだ、と考えているからだ。音楽の暴力を真正面から受け止めるか、ひらりと避けながら自分なりのスタイルで楽しむかは、まさにリスナー次第である。