カテゴリ: アルバム紹介

新年あけましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いします。
早速ですが、2015年ベストアルバム20選を公開します。今回は全ジャンルぶっこみ&順位付け無しです。そして順不同。
本当は昨年のうちに公開したかったけど、選び終えた時点で放置してたら初日の出を迎えてました・・・。



Amahisa / Reconstruct-spica

リリース: 2015/10/4
試聴: ニコニコ動画 / Soundcloud
販売: BOOTH

※画像をクリックorタップすると、
アーティスト公式サイトへジャンプします。


1枚丸ごと泉和良の小説「spica」へのオマージュが詰め込まれている。それだけではなく、音楽は泉和良の手掛けるゲームプロジェクト「アンディー・メンテ」からのアレンジとなっており、同一人物が別々に発表した小説と音楽を用いて「泉和良」という世界を改めて構築した類まれなるコンセプトによるものと言える。


eicateve / LOVE

リリース: 2015/4/26 (M3-2015春)
試聴: Soundcloud
販売: Diverse Direct

※画像をクリックorタップすると、
アルバム特設サイトへジャンプします。


CDをトレイに入れ再生ボタンを押した瞬間、「これだ!!!!これが俺の聴きたかった音楽だ!!!!」と思わずガッツポーズ。そのようなハマり方をしたアルバムは、今年はこの1枚だけだった。四つ打ち楽曲のダークさも素晴らしいが、ビートのない曲のドロドロさ加減が何とも素晴らしい。


k-waves LAB / la malgrava peto

リリース: 2014/12/30 (コミックマーケット87)
試聴: Soundcloud

※画像をクリックorタップすると、
アルバム特設サイトへジャンプします。


前年暮れのリリースなので(大晦日の前日)ほぼ2015年リリース。種々の民族楽器を操るk-waves LAB。活動の大部分は東方を中心としたアレンジCD制作と”演奏してみた”動画制作だが、このアルバムは氏のオリジナル曲の集大成となっている。タイトル曲「la malgrava peto」は当初初音ミクボーカルとして公開され、全編エスペラント語の歌詞が話題となった。詳しくは個別レビューにて。

→ 【アルバムレビュー】 k-waves LAB / la malgrava peto


悠木碧 / イシュメル

リリース: 2015/2/11
販売: Amazon.co.jp / mora(24bit/96kHz)

※画像をクリックorタップすると、
インタビュー記事へジャンプします。


収録曲「アールデコラージュ ラミラージュ」を聴いてみれば分かるが、これほど強烈な楽曲が収録された声優アルバムにも、またこれほど強烈な楽曲をコンセプト内部に完璧に組み込んだアルバムにも滅多に出会えない。bermei.inazawaや藤林聖子といった超が付くほど個性的な面々を、悠木碧自身が構築した完璧な布陣に則って配置しているのだ。だからこそ、これら作家陣が腕を存分に振るって作家性を発揮するほど、アルバムの世界観はより強固になっていくのだろう。


ハイスイノナサ / 変身

リリース: 2015/3/11
試聴: YouTube
販売: 残響record Online Store
TOWER RECORD ONLINE / Amazon.co.jp / iTunes Store

※画像をクリックorタップすると、
バンド公式サイトへジャンプします。


ハイスイノナサは前作「reflection(→YouTube)」にて会心の一撃を放った。この曲で私は、このバンドは自らの作風を完成へ導いたと確信し、その後の活動に大いに期待した。それから二年半が経ち、目立った活動をしなかった後にリリースされたのがこの曲。何ということだろう、このバンドはあの時自ら得た”完成形”を完全に捨て去った。そして放った渾身の挑戦作がこの「変身」なのだが、これまでで一番クールでテクニカルで、かつバンドの色にかっちりハマった曲であると断言するに足る完成度だった。3曲入りシングルでありながら、アーティストとしての挟持を示した極めて重要な、そして輝かしい一枚である。


Aimer / DAWN

リリース: 2015/7/29
試聴: YouTube
販売: Amazon.co.jp / mora(24bit/96kHz)

※画像をクリックorタップすると、
インタビュー記事へジャンプします。


ハズレのない安定感、というのはポップ・シンガーのアルバムを評価する上で外せない軸だが、Aimerはその優れた表現力でそこから先の世界をも見せてくれる。菅野よう子が手掛けた深淵を極める「誰か、海を。」や、あまりに渋いロックバラード「Brave Shine」の2曲をアニソンとしてリリースした功績は極めて大きく、それらが1枚のアルバムに収まっているという事実には心底身震いする。


光田康典ほか / クロノ・トリガー&クロノ・クロス アレンジアルバム ハルカナルトキノカナタへ

リリース: 2015/10/14
試聴: YouTube
販売: SQUARE ENIX e-STORE (CD / LP)
Amazon.co.jp / mora(24bit/96kHz)

※画像をクリックorタップすると、
アルバム特設サイトへジャンプします。


光田康典による「クロノ・トリガー」「クロノ・クロス」の音楽は発売から長い年月を経た今なお高い人気を誇るが、これまで公式のアレンジアルバムは変化球の「THE BRINK OF TIME(→Amazon.co.jp)」しかなかった。初の公式リリースである本作の持つ”重み”は、リリース数に恵まれたFFやDQとは根本的に異質である事が感じられる。特に1曲目「時の傷痕 ~ハジマリノ 鼓動~」は、光田の盟友で光田作品に長年関わってきたZABADAK・吉良知彦によるアレンジだが、込められたありとあらゆる感情がまさに爆発しているかのような渾身の一撃となっており必聴。


きくお / きくおミク4

リリース: 2014/12/30
試聴: YouTube
販売: Amazon.co.jp / とらのあな / BOOTH

※画像をクリックorタップすると、
アルバム告知ページへジャンプします。


詳しくは昨年書いた個別レビューに譲るが、これまでで最も”アルバム単位で聴かせる”ことを意識し、それが成功した1枚であると言える。特に5曲目「Giant」と9曲目「フラットライン」はこのアルバムの流れだからこそ生まれた名曲なのだろう。

→ 【アルバムレビュー】 きくお / きくおミク4


ypl / 輪形彷徨

リリース: 2015/1/11
試聴: ニコニコ動画 / YouTube
Free Download: Bandcamp

※画像をクリックorタップすると、
ニコニコ動画内プロフィールへジャンプします。


アルバムとしては2009年2月の「Garbage Collection」以来6年ぶりとなる2nd。軽いと思いきや各所のフレーズが脳裏に焼き付く、オンリーワンのエレクトロニカ。この不思議な緊張感は、おそらくyplの作品でしか味わえないだろう。そして、このアルバムは驚くべき事にフリーダウンロードで公開されており、FLAC/ALACでダウンロードすれば24bit/48kHzのハイレゾ形式で入手できる。実を言うと去年全曲レビューを書こうとして挫折した1枚なので、今年機を見つけてリベンジしたい。


邪界ニドヘグほか / in the Dark 2

リリース: 2015/10/26 (M3-2015秋)
試聴: ニコニコ動画 / YouTube
販売: TOKYO FUTURE MUSIC

※画像をクリックorタップすると、
ディスコグラフィーへジャンプします。


私も参加しているフリーマガジン「DAIM」で紹介した一枚(→告知)。絵と音楽で強烈な個性を放つ邪界ニドヘグがコンピレーションを企画したらこうなった。本人の作品から受ける印象に違わぬ真っ暗な電子音楽を15曲存分に堪能できる。主宰による参加者の紹介コメントも充実しており、誠実な人柄が伺えるところもポイント。なお、アーティストとしての邪界ニドヘグに興味がある方は、同じく2015年にリリースされ氏の歴史が凝縮されているソロアルバム「ケダモノ」も併せておすすめしたい(→YouTubeで試聴)。


Bjork / Vulnicura

リリース: 2015/4/1
販売: Amazon.co.jp / mora(24bit/96kHz)

※画像をクリックorタップすると、
日本語版公式サイトへジャンプします。


発売前にリークに遭って配信のみ急遽大幅前倒しでリリースした、という事件も記憶に新しいビョークの最新作。事実、私もiTSで先行配信を買い、非常に良かったため後日moraでハイレゾでも買っていたりする。それはさておき、今作の最大の魅力は久しく味わえなかった”ビョークの人間味”だろう。前作のミニマル路線も嫌いではないが、やはり「Volta」のような人間の呼吸が聴こえて来るような生々しい作品の方が好きだ。「ハートブレイク」がテーマであり、アルバムの前半は愛し愛された甘い記憶、後半は見捨てられ悲しむ展開となっている。その表現はとても率直で、明から暗への転換も非常に劇的であるため、このアルバムには場面の想像や感情移入がしやすい。サウンドも分かりやすさを志向しているのだが、その深さもまた伊達ではないところは流石ビョークと言うべきか。全編ストリングス・アレンジの「Vulnicura Strings」や、ライブアルバム「Vulnicura Live」と関連作のリリースが続いている。


Arca / Mutant

リリース: 2015/11/18
販売: Amazon.co.jp / mora(24bit/44.1kHz)

※画像をクリックorタップすると、
Soundcloudアカウントへジャンプします。


直近ではBjorkの新作「Vulnicura」のサウンドプロデュースを手掛けたArca。1年ぶり2枚目となるMUTEからのフルアルバムは、前作を聴いた人間ほど驚くかもしれない。「あれ、Arcaってこんなに聴きやすかったっけ?」というのが私の率直な感想だ。これはもちろんいい意味で言っており、音のひとつひとつが実に攻撃的で、視聴者に積極的にアピールしてくるのだ。また、非常に貪欲なサウンドである事も付記したい。貪欲だからこそサウンドを磨いて更なる深みを求め、貪欲だからこそ展開の出し惜しみをしない。”展開の出し惜しみ”とはテーマの誕生から完結までのスパンを伸ばす事を指し、それをしていない今作ではアルバム1作の中でいくつものテーマが生まれては終わり、違うテーマが次々と生まれていっている。それほどまでに濃密な時が流れているのだ。まさに感性の奔流、魚のように跳ねて回る電子音の水しぶきまでもが聞こえてきそうなフレッシュさをも感じられる。Arcaは自らの生命観を最大限に投影してこのアルバムを作り上げたのだ。聴いていて感じる”美しさ”とは、まさに生命そのものの”美しさ”に他ならない。


浜渦正志 / LEGEND OF LEGACY Original Soundtrack

リリース: 2015/3/18
試聴: YouTube(1st PV)
販売: MONOMUSIC OFFICIAL SHOP
ディスクユニオン / タワーレコード / HMV / 芽瑠璃堂

※画像をクリックorタップすると、
アルバム特設サイトへジャンプします。


浜渦正志単独名義のゲームサントラとしては、あのFF13以来5年ぶりとなる待望の一枚。2枚組95分とRPGサントラとしてはコンパクトながら浜渦正志のエッセンスが凝縮されており、サントラ全体の流れもひとつの音楽物語として秀逸だ。そして、ラストの主題歌「エンディングテーマ~旅人のうた~」は浜渦のユニット”IMERUAT”でもコンビを組んでいるMinaが歌っているのだが、非常にミニマルで静かである意味で主題歌らしさは無いものの、その危ういバランスの上で成り立つ美しさは本当に奇跡的としか言いようがない。手頃な長さであることもあり、今年リリースされた中で一番、最初から最後まで通して聴いたサウンドトラックである。そして、何度繰り返し最後まで聴いても、また最初から聴き直したいと思えてくるのだ。


川田瑠夏 / TVアニメーション ハロー!!きんいろモザイク サウンドブック「また、会えたね。」

リリース: 2015/6/17
販売: TOWER RECORD ONLINE / Amazon.co.jp

※画像をクリックorタップすると、
アニメ公式サイトへジャンプします。


コトリンゴが「幸腹グラフィティ」の劇伴を手がけるなど、いわゆる「日常系アニメ」の音楽の幅が少し広がった感のある2015年だが、今年特に聴きこんだのは「ハロー!!きんいろモザイク」(2期)のサントラだ。「ご注文はうさぎですか?」と同じ川田瑠夏による仕事だが、ヨーロピアンなイメージの”上品さ”と日本の日常生活を思い起こさせる”ゆるさ”が絶妙なバランスで混じり合った良盤だ。ほどよい品の良さから日常生活における癒やし効果も絶大であり、今年はこのアルバムに救われた事が何度もあった。同じく川田瑠夏による「ご注文はうさぎですか?? オリジナル・サウンドトラック(→Amazon.co.jp)」(12月27日発売)はどちらかと言うとヨーロピアン路線が強めで大作オーラを感じさせるので、両方聴いて違いを確かめてみるのも面白いかもしれない。


菊田裕樹 / 死者の代弁者

リリース: 2014/12/30 (コミックマーケット87)
試聴: ニコニコ動画

※画像をクリックorタップすると、
アーティスト公式サイトへジャンプします。


前作「女子真空管交響楽(→Bandcamp)」に続く1トラック・アルバム。前作では先行した強烈なビジュアルイメージがあったが、今作は「20世紀」という主題が設定されているのみ。”パリ万国博覧会に始まり、科学時代の到来、二度の大戦を経て、未曾有の繁栄、進歩と調和に至る、20世紀という時代の本質を、メロディとハーモニーの妙を凝らしながら菊田裕樹が活写します!”とは菊田裕樹自身によるこのアルバムのコンセプトであり、映画やドキュメンタリーのような重厚なオーケストラが響く。金管と弦楽器による印象的なフレーズは曲中何度か登場するが、その度に受ける印象が異なるのは、1曲47分25秒という長い時間一心に聴きながら様々な思いを巡らし、それぞれ異なる思いでフレーズと再会するからなのだろうか。前作でも思ったが、反復の美学とは曲自体の構成美よりも、むしろ様々な方向へ移ろうリスナーの思考・感情を煽り立て、増幅させるところにあるのではないだろうか。


荒御霊 / Deepdream of Doppelganger

リリース: 2015/10/12 (科学世紀のカフェテラス)
試聴: Soundcloud
販売: メロンブックス / アキバホビー

※画像をクリックorタップすると、
アルバム特設サイトへジャンプします。


荒御霊による東方アレンジアルバム。美しいジャケットイラストに惹かれて試聴したところ、これまた美しいダークアンビエントだったため購入。荒御霊は基本的にテクノ(狭義)アレンジで活動しているが、こうして時折アンビエント路線に寄ることもあり、2013年夏の「心娶 kokorometry(→特設サイト)」のような快作をリリースしたりもする。

今作におけるメインの題材である「秘封倶楽部シリーズ」は元々弾幕ゲームではなく音楽+小説作品であり、しかも主役の2人は幻想郷ではなく現実世界の人間である事から、その二次創作は東方界隈でも少々特殊な文脈で生まれてきている事が想像できる。また、同様に題材となっている「東方深秘録」は弾幕ゲームであると同時に秘封倶楽部とも深い関連にあり(ジャケットに描かれた少女は深秘録の新キャラで秘封倶楽部関係者の「宇佐美菫子」だ)、またシリーズ最新作「東方紺珠伝」のアレンジも複数収録されている事から、荒御霊はこのアルバムで秘封倶楽部周りの世界観を一旦整理・再構築しようと試みたのではないか、と勝手に想像している。


成田勤・植松伸夫ほか / GRANBLUE FANTASY BATTLE MUSIC TRACKS & STORY MUSIC TRACKS

リリース: 2015/11/20
販売: Cystore(BATTLE / STORY)


Cygamesによるソーシャルゲーム「グランブルーファンタジー」のサウンドトラック第2弾は、戦闘曲集「BATTLE MUSIC TRACKS」とフィールド曲集「STORY MUSIC TRACKS」に分けて同時リリース。2014年8月リリースの第1弾(→Cystore)は、2014年ベストサントラ第1位とするに些かも躊躇しない完成度だったが、今作は場面の性質で盤を分けたためかアルバム全体の展開のメリハリは乏しい。その分、バトル曲なら勢い、フィールド曲なら情景感といった一点特化の構成となっているため、楽曲・アルバム双方の鋭さは大いに増している。

"STORY MUSIC TRACKS"のラストトラック「遥かなる旅路、天翔ける戦線」は、第1弾でラストを飾った名曲「天に散りし覇者との邂逅」を髣髴とさせる長尺のプログレ風味でたっぷりとした余韻を味わえるし、 "BATTLE MUSIC TRACKS"のボス曲オンパレード(ヤバイ)の中で、「リヴァイアサン・マグナ」は前作のフィールド曲にして傑作バラード「アウギュステ列島 -白沫の瀑布-」のメロディを激しい民族調ロックにアレンジしており度肝を抜かれた。アルバムとしての完成度では前作が突出しているが、第2弾となる今作も楽しみどころが多く、総合的にはかなり楽しめた。音楽でグラブルを凌ぐであろうスマートフォンゲームはまだまだ現れないかもしれない。


bermei.inazawa / Tone\bermei.inazawa collection

リリース: 2015/4/26 (M3-2015春)
試聴: YouTube
販売: Amazon.co.jp / メロンブックス / Diverse Direct

※画像をクリックorタップすると、
アーティスト公式サイトへジャンプします。


bermei.inazawaのベストアルバム。2011年リリースの「Chords(→YouTube)」が商業音楽からの選集である事に対し、本作「tone」は同人音楽からの選曲となっており、タイトルやアートワークも対になっている。時空を超えて集った13曲は爽やか路線からダーク路線までいずれも濃密なものであるが、本作の肝は何と言っても収録曲の製作年月の幅だ。最新のものは2013年暮れのTr.10「今際」で、最古のものはなんと1999年8月の「輝く季節へ」だ(曲名でピンと来た方は是非ググッてみてほしい)。これら新旧の2曲を並べて聴いても同一人物の作品として一切の違和感を感じさせない辺り、bermei.inazawaの"ぶれなさ"と"深さ"を改めて確認できた次第である。


Rayark / 『Deemo』Song Collection

リリース: 2015/7/15
販売: TOWER RECORDS / Amazon.co.jp / iTunes Store

※画像をクリックorタップすると、
日本語版公式サイトへジャンプします。


台湾Rayark社によるスマートフォン向けリズムゲーム「Deemo」初のサウンドトラック。まるで絵本のようなビジュアルイメージ、哲学的で感傷的なストーリー、そしてエレクトロニカやピアノ曲を含む静かな楽曲群・・・。一般的なリズムゲームのイメージからは大きくかけ離れた異色づくしのタイトルであるが、そのすば抜けたセンスと作品自体の質の高さで世界規模の人気を得ている。日本人ミュージシャンも数多く楽曲提供しており、Mili「Yubikiri-Genman」は歌詞が全編日本語、Rabpit「Saika」は三味線をフィーチャーするなど日本色も散見される。特にMiliの楽曲は当サウンドトラックに複数収録されており、当ブログでもアルバム「Mag Mell」を紹介した記事を掲載している(→当該記事)。


Stripeless / MIKUHOP LP2:Border

リリース: 2015/10/25 (M3-2015秋)
販売: Bandcamp / TOKYO FUTURE MUSIC

※画像をクリックorタップすると、
レーベル公式サイトへジャンプします。


前作「MIKUHOP:LP」から1年を経てリリースされたボーカロイド・ブラックミュージック・コンピレーション第2弾。今回は物理媒体と配信の2形態でのリリースとなる。物理媒体と言ってもCDだけではなく、カセットテープとSONOCA(カード形式)も含めた合計3種類で頒布されている。参加アーティストは「とりあえずここにいる人抑えときゃこの界隈の音はおおむね分かる」と言えるほど幅広く集まっており、十人十色のありとあらゆる”ブラックミュージック”が一堂に会する様はまさに圧倒的だ。中途半端なトラックはひとつもなく、全収録曲が自らの”正義”を掲げてリスナーの脳髄に殴り込んで来る。このアルバムはいずれ全曲レビューをしたためたいものだ。


ニンジャスレイヤー フロムコンピレイシヨン 忍&殺

リリース: 2015/7/22
販売: KING e-SHOP / Amazon.co.jp
CM: YouTube

※画像をクリックorタップすると、
アニメ公式サイトへジャンプします。


リリース: 2015/11/25
販売: KING e-SHOP / Amazon.co.jp

※画像をクリックorタップすると、
アニメ公式サイトへジャンプします。


2クール半年間に渡り様々なものを残していった「ニンジャスレイヤー」アニメ版。ニンジャたちの暴虐の数々は視聴者一人ひとりの心に残るが、毎回異なるED曲を起用した豪勢な演出はコンピレイシヨンCDとして残り続ける。主に日本のアンダーグラウンドシーンで活動するロックバンドが軸となっているが、その選定は原作者コンビとほんやくチームによるもの。どこからこれほど濃い面々を集めたのかと思うほど、放送時は毎回のED曲が楽しみで仕方なかった。ボーナストラックとしてMONDO GROSSOの大沢伸一による劇伴が数曲収録されておりこれはこれでお得感があるのだが、サントラ本編は単行本特装版(プレミアで高い)やBlu-ray特典CD(実際高い)でしか聴けないため少々ハードルが高い。しかも重要な曲はだいたい特典サントラの方にのみ入っている。KABOOM!!! 今年春からの地上波放送を機に、サントラ周りに新たな動きがあることを願うばかりである。


先日のM3で買ったCDのレビュー、どれから書こうか悩みに悩んで結局まだ書けていないという何とも情けない話ですが、つい最近知ったこのバンドのアルバムがクリーンヒットしたので(M3とは無関係ですが)一筆書かせて頂きます。

ポーランドで結成された4人組インストゥルメンタル・バンド「Merkabah」。ざっと調べたところFacebookとBandcampしか見当たらず途方に暮れていたのですが、その最新作「Moloch」が凄まじいの一言でした。



Merkabah / Moloch

リリース: 2014/3/28
ジャンル: プログレッシブ/ノイズ/エクスペリメンタル/
サイケデリック/音響/ロック
Download: Bandcamp

※画像をクリックすると、
アーティスト公式サイトへジャンプします。


とある知人が「downy好きならいける」と言ってた通り、しょっぱなからギターもベースもドラムもドロッドロ!!!奈落の底へ急転直下するかのようなデロンデロンな演奏には、ちょっと口では言い表せないくらいの怨念が込められている。重く、暗く、アブストラクトさを徹底した録音により、そのサウンドからは闇以外のものが完全に弾き出されてしまっているのだ。純粋な闇に最初は恐怖を覚えるものの、徐々にその美しさに惹かれていき、最後まで右も左も分からないままあっという間に50分を聴き終えるのだ。

・・・しかし、もし、このバンドの要素がこれだけだったとしたら、これといった個性もないありふれたサウンドだったという感想で終わっていたと思う。そこに華を添えるのがサクソフォーンだ。こいつがアルバム全編を通してとにかく暴れる。比喩でも何でもなく、金切り声を上げるように叫び回る役目を貫き通すのが、このバンドにおけるサックスの立ち位置なのである。プログレッシブ路線の粘着質ながらも硬派なロックサウンドにサックスが添えられることで、そのサウンドには一気に人間味が増す。さながら、暴走する機械の上で一人の人間がよがり狂っているかのような、強烈なリアリティを感じることが出来るのだ。だからこそ、このバンドはプログレッシブかつテクニカルでありながら、むせ返るような爛れた音像を放てるのだろう。ああ、救いようがない。どうしてくれるんだ。最高すぎるじゃないか。



さらには、このバンドの音にビビッと来た理由はこの人間味あふれる凶暴性だけではない。その暴力の果てに、このサウンドは音響性を手に入れているのだ。音響というジャンルはアンビエント・エレクトロニカとセットにされることが多い、比較的落ち着いた電子音楽の一種であり、一見プログレッシブでジャズでノイズなロックとは関係なさそうだ。

ところで、このアルバムは全体を通して「一様に暴力的」であるため、途中で曲調がガラリと変わったりとかはしない。最初から最初まで、このあり得ないテンションで突っ走るのだ。そのパワーは1曲目の時点で既に恐怖を覚えるものであるが、聴いていくにつれ少しずつそれが「当たり前の光景」に見えてくる。2曲目を聴き終える頃には、2曲目の持つ衝動が当たり前のものとなり、じわりとパワーアップした3曲目にまた恐怖する。その繰り返しを経て、少しずつ少しずつボルテージを上げられたリスナーの精神は、ラストの8曲目に到達した時点で、自分でも気が付かないレベルにまで高揚させられているのだ。淡々とした暴力により徐々に麻痺させられていく聴覚。これはまさに「恍惚」と呼べるものであり、そしてそれは「音響」という電子音楽の神的な深さとも通じる、と筆者は考えている。そう、このバンドのサウンドに神的な深さを与えているもの、ただの暴力的なだけではなく、人の心に深く刻まれる「温度」をもたらすものこそ、導き手であるサクソフォーンの悲鳴なのだ。



このバンドはボーカルのいないインストゥルメンタル編成となっている。しかし、聴けば一目瞭然だろうが、サクソフォーンが完全にボーカルの立ち位置を占めているため、アルバムを聴き終えた後もインストゥルメンタル・バンドという感覚は得られなかった。人の歌声に劣らない、いやそれ以上のメッセージを込めてサックスの叫び声はリスナーの耳を叩き付けることだろう。しかしこのことは、裏を返せばサックスを中心としたサウンドメイキングとなっていることを意味し、同時にそれ以外のパートがこれと言って主役を張ることも少ないということになる。記事の冒頭でdownyを引き合いに出したが、downyを「ぶっとんだ4人の個人が全員主役を張るバンド」とするなら、ポーランドのMerkabahは「1体の巨大生物がのた打ち回るバンド」と表現できそうだ。もちろん頭部はサックスが該当する。しかし、体を成すギター、ベース、ドラムは総体としてとんでもない物量と密度を形作っており、主役ではないが脇役と言うにもあまりに力がありすぎる。うーん、なんて言えばいいんだ。全員ラスボス?

50分で1曲と言えるほど一体感のある展開を見せ、ラストのラストでがっちり締めて最高の余韻をくれる素晴らしいアルバムなのだが、なんとBandcampではName Your Priceで買えてしまう。つまり最低ゼロ円で入手できてしまうのだ。しかも望むならCDと同じ音質を用意してくれるという。恐ろしい時代だ。生まれた時代への感謝を込めて、このアルバムを全身全霊を込めておすすめする次第である。



C87で購入したCDのレビュー、今回は志方あきこさんのアルバム「歯車館のエルデ」と、イベント限定CD「Sorso」の2枚です。

志方あきこさんは同人音楽出身の方ですが、現在は「アルトネリコ」シリーズを始めとしたゲーム音楽でも活動しています。主に”民族調”を中心に手がけており、同人音楽界隈へサウンド面で与えた影響も大きいと言われているそうです。こういった重厚な民族調の他には、オルゴールを用いたシンプルな楽曲を制作することも多く、今回レビューさせて頂くアルバムはいずれもほぼオルゴールだけで構成されています。



志方あきこ / 歯車館のエルデ

リリース: 2013/08/12
ジャンル: 物語音楽
販売: 即売会・ステラワース

※画像をクリックすると、
アーティスト公式サイトへジャンプします。


このアルバムは、構成される音のほぼすべてがオルゴールだ。オルゴールが主旋律を歌う音楽、ではなく本当にオルゴールの音のみで作られているのである。ボーカルすらないため、このアルバムには”歌詞”に相当するものはないのだ。しかし、上にも書いた通りこれはれっきとした”物語音楽”であると言える。なぜなら、その”物語”は散文の形で歌詞カードに書かれており、曲のひとつひとつにあてがわれているからだ。散文はいずれもとても短く、全11曲分を合わせても3ページ分にしかならない。しかし、デザインや組版が一癖も二癖もあるため、それぞれの物語が各々存在感を放っている様が見て取れて面白い。

数多の物語音楽と異なり、物語の脚本である歌詞も、語り手である歌手もいない。歌詞カードの散文を眺めながら、オルゴールのシンプルだが力強い音色に全神経を集中させるのだ。したがって、このアルバムではリスナーの想像力が試されることになる。音楽は劇伴のように背景に溶け込むこともあるし、散文は曲が流れている間ずっと読む必要があるほど長く濃密なものではない。本当に軽い気持ちで聴けるアルバムで、”物語音楽”は必ずしも重厚さ、荘厳さを必要としていないということを教えてくれる。個人的には、絵本の朗読とそのBGMというイメージを抱いている。物語自体の内容も決して重々しいものではなく、まさに童話の絵本のように手軽に、しかしその”読後感”はきわめて充足したものとなるのである。




志方あきこ / Sorso

リリース: 2014/12/30
ジャンル: イージーリスニング
販売: 即売会

※画像をクリックすると、
アーティスト公式サイトへジャンプします。


C87(2014年冬コミ)が初頒布となる、新曲2曲を収録したイベント限定CD。1曲目「Sorso」はミディアムテンポのバラード。民族楽器を用いてはいるがとても聴きやすいポップスの形を取っている。歌詞は日本語ではなく、架空言語と思しき不思議な響きをしている(歌詞カードがないCDなのでよく分からなかった・・・)。2曲目「オトシモノ ~Orgel Arrange Ver~」は全編オルゴールの曲だ。アレンジ元は知らない曲だったのだが、どうやら現在製作中のアルバム曲のオルゴールアレンジらとのことだ。なんと本家よりもアレンジの方が先に世に出たということになる。・・・というより、このCDについてはご本人がTwitterでがっつり解説されているので、そちらを転載した方が分かりやすい紹介になりそうだと気づいた。気づいてしまった。レビューサイトとは何だったのか。

怒涛の引用を前に総括を。2枚とも、オルゴールというものの表現力に気付かせてくれた素敵なアルバムだった。特に「歯車館のエルデ」は、11曲40分のほぼ全てがオルゴールで、しかも音の数も3つほどしかない音色の変化に乏しいサウンドだったにも関わらず、明るいものから暗いものまで物語が展開するかのような様々な表情を見せてくれた。これは筆者もかなり驚かされた。あえて失礼な表現をするなら、期待以上、いや期待をはるかに超える密度のアルバムだったと思う。サウンドの派手さを競った音楽は大好物なのだが(制作中だという「和風CD」はさぞかし凄いことになっているのだろう)、こういったシンプルさを極めたものもまた悪くないものだ。







このページのトップヘ